治水事業の沿革と現状
流域の浸水被害は、当該流域が前線や台風が集中しやすい地域であり、かつ、降雨を早期に河川へと流出させ、短時間のうちに増水させる急峻な地形であることも相まって、河津川流域では、戦後、幾度もの風水害に見舞われている。
洪水被害をもたらした著名な洪水としては、昭和33年9月の狩野川台風、昭和51年7月の豪雨・台風9号、平成3年9月豪雨等である。特に、狩野川台風による被害は甚大であり、風速30m、350mmの雨量を記録し、家屋全壊、半壊、流出、橋の流出等の甚大な被害を受けた。また、昭和51年7月洪水では、集中豪雨により、多くの中小河川の氾濫と山崩れ、平成3年9月洪水では、局地的な集中豪雨による内水氾濫や土砂流出等による氾濫により、多大な被害を受けた。近年では、平成5年11月洪水以降、豪雨等による被害は発生していない。
また、流域の9割を山地が占め、洪水被害の多くは土砂流出による災害であることから、流域内では11箇所の河川・沢が砂防指定地に指定されており、各指定地に砂防施設が設置されている。
治水事業の沿革は、昭和33年の狩野川台風を契機に堤防築造等の河川整備が実施された。その後、昭和42年~50年にかけて河津川の局部改良事業が実施され、支川河津谷津川においても、昭和50年~53年、平成3年~4年にかけて災害関連事業として護岸・護床整備が行われ、支川大鍋川では、平成17年、18年に護岸整備等の河川整備が実施された。
なお、河口部では海岸からの打ち上げ土砂の堆積により、砂洲が発達しているが、毎年発生する出水程度でその砂洲がフラッシュされることから、河口閉塞は進行していない。
また、現在までに、静岡県第3次地震被害想定(平成13年)に基づく津波対策として、堤防の嵩上げ等が完了している。
その後、平成9年の河川法改正に伴い、河津川水系河川整備基本方針を平成25年4月に策定し、河津川の基準地点峰大橋における基本高水のピーク流量を920m3/sとし、計画高水流量は、基本高水のピーク流量と同じ920m3/sとする計画とした。
東日本大震災を踏まえた静岡県第4次地震被害想定(平成25年)では、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「計画津波」※1と、発生頻度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす「最大クラスの津波」※2の二つのレベルの津波が設定されており、河津川では「計画津波」は河川内を約1.4km以上遡上するとともに、「最大クラスの津波」では、河川及び海岸堤防を越流し、沿岸部で最大約39ha以上が浸水すると想定されている。
※1 計画津波:静岡県第4次地震被害想定で対象としている「レベル1の津波」
※2 最大クラスの津波:静岡県第4次地震被害想定で対象としている「レベル2の津波」