中部の治水対策
境川
境川では、昭和49年7月などに浸水被害が発生しました。境川の治水は、昭和47年の国による境川樋管の完成や昭和49年7月洪水などを契機として昭和52年に改修に着手し、狩野川合流点から河積の拡大と著しい屈曲部の解消を進め、平成16年までに、約2km区間の改修を完了しました。近年では、上流の未改修区間において溢水による住宅や生活道路の浸水被害が発生しています。また、狩野川合流点においては、平成4年及び平成12年に国により排水機場が整備されましたが、内水氾濫による浸水被害も生じています。
境川・清水町久米田・新橋付近
大場川
大場川流域では、昭和33年9月の狩野川台風、昭和49年7月、平成2年9月、平成10年9月などに浸水被害が発生しています。大場川の治水は、昭和24年に計画高水流量を460立法メートル/秒に定め、その後昭和41年から国管理区間の改修が開始されました。引き続き、昭和46年から県管理区間において改修に着手し、狩野川の背水の影響を受ける下流部の有堤区間や、盆地状の平地である中上流部の有堤区間を中心に改修が進められました。市街化が進んでいた中下流部は、掘込河道であり、護岸整備を中心に河川工事が行われてきましたが、河岸決壊による人家流失を含む大きな水害が発生した平成2年9月の洪水を契機に、集中的な投資により短期間で改修が進み、青木橋から下流の4.1km区間で流下能力の増大が図られました。しかし、平成10年8月には洪水時の激しい流れにより再び河岸決壊が発生し、住宅の一部や生活道路の流失などの災害が発生したことから、専門家の助言等を得て河床の異常洗掘防止とモニタリングの充実などの対策を講じました。大場川の右支川である御殿川の治水は、昭和39年に改修に着手し、大場川の背水影響区間でもある下流部有堤区間において堤防の整備と河積の拡大を進めてきました。平成16年までに、八反畑上橋付近までの約1.8km区間で改修が完了しており、大場川の背水影響区間である鶴喰橋付近までは約300mを残すところとなっています。大場川の左支川である三島山田川の治水は、広範囲で浸水した昭和36年6月洪水の浸水区間において、昭和37年に改修に着手して堤防の整備と河積の拡大を進めました。昭和43年までにJR橋東海道線迄の約0.8km区間で改修が完了し、平成7年から引き続き上流区間の改修を進めています。なお、大場川流域では、平成2年9月洪水を契機に、学識経験者や流域市町、国及び県で構成する検討委員会を設立し、協議・検討を進めた結果、河川と流域を一体として考えた総合的な治水計画である「大場川流域水防災計画」が平成4年3月に策定されました。これまでに、防災調整池設置など開発に対する適切な指導に加え、学校などの公共公益施設を利用した雨水貯留浸透施設の整備などが行われており、今後もこの計画の着実な実施が重要です。
大場川・中島・御殿川合流点付近
来光川
来光川流域では、昭和57年8・9月、平成10年8月・9月などに浸水被害が発生しました。特に既往最大洪水となった平成10年8月洪水は来光川の計画高水流量に匹敵する流量となり、溢水や内水氾濫による浸水被害が広範囲で発生しました。来光川の治水は、この平成10年8月洪水を契機とした集中的な投資により、県管理区間の下流端より堤防の整備と河積の拡大が進み、平成15年までに松川橋付近までの約1.8km区間の改修を完了しました。しかし、この上流の扇状地区間においては、堤防の無い区間や堤防断面が不足する区間など、堤防の整備が必要な区間が残されています。来光川の左支川である柿沢川の治水は、昭和48年に改修に着手し、県管理区間の下流端より堤防の整備と河積の拡大を進めてきましたが、平成10年8月洪水を契機に改修を促進させ、平成15年までに畑毛大橋付近までの約3km区間の改修を完了させました。下流の平地部では、地形的に自然排水が困難な農用地を中心に、内水氾濫による浸水被害が発生し、湛水防除事業による排水機場の整備が実施されています。また、上流部にある丹那盆地では、平成10年8月洪水で地形的な特性により農用地を中心とした浸水被害が発生しています。
柿沢川
柿沢川では、平成10年8月30日未明から激しい豪雨に見舞われ、柿沢川上流の静岡県丹那雨量観測所においては、総雨量288mmで、午前7時から9時までの2時間の雨量は111mmに達しました。この豪雨により柿沢川が氾濫し、柿沢台地区含む平坦地域で床上浸水264棟、床下浸水298棟の浸水被害に見舞われました。平成11年には、新畑毛大橋から駒形橋までの間のショートカットを含め、堤防拡幅工事に着手。河川低水部については、畑小谷の沢の砂防工事現場から発生した自然石を利用し、環境に配慮した改修が施工されました。平成12年には、ショートカット部の河川本体工事が概ね完成。懸案だった旧川合流部の用地の協力が得られ、8月に通水式を挙行しました。また駒形橋の下部工が完成し11月には、上部工の架設に着手。長年に渡るショートカット事業が概ね完成しました。平成13年には、旧川合流部の築堤工事に着手すると共に、畑毛排水機場周辺の築堤工事に着手。また榎木橋下部及び条件護岸及び畑毛大橋・北大橋にも着手しました。平成14年には、畑毛大橋周辺の護岸工事嵩上げ工事に着手し、畑毛大橋、北大橋が完成。また、河川構造物でもある4基の樋管の工事と旧川合流部の環境整備に着手しました。平成15年度には、長崎橋上流の国交省取付部の築堤工事と4基の樋管工事及び畑毛機場から韮山町リサイクルプラザまでの築堤工事を実施し、柿沢川河川改修工事が全て完了しました。
洞川
洞川では、平成10年8月、平成14年10月、平成16年10月などに、内水氾濫による浸水被害が発生しました。洞川の治水は、旧韮山町(現、伊豆の国市)により、一次改修され、その後、平成3年に県管理の一級河川に指定されたのち、平成8年から国により樋管の改築及び排水機場の新設が行われ、平成12年に排水機場の施設能力が増強されました。しかし、その後も、床上浸水や国道の冠水による通行止めなどの浸水被害が発生しています。
韮山古川
韮山古川では、平成10年9月、平成14年10月、平成16年10月などに、左岸側の低地部を中心に、内水氾濫による住宅の床上浸水や鉄道の運休などの浸水被害が発生しています。 内水対策を進める上では、韮山古川の流下能力を向上させる必要があります。 韮山古川は、山地から田方平野方面南部に注ぐ河川で、平坦な田園地帯と市街地を流れ、狩野川に合流します。その流域にある伊豆の国市中條・南條地区は、堤内地盤高が低く、たびたび浸水被害が発生しました。とくに平成14年10月の台風21号による集中豪雨は、時間雨量43㎜を記録し、浸水面積42.3ヘクタール、家屋の床上浸水24戸、床下浸水133戸、さらに伊豆箱根鉄道伊豆長岡駅の冠水など交通機関にも甚大な被害をもたらしました。当該事業は、川の断面を大きくして、近年最大であった平成14年豪雨と同規模の豪雨が発生した際に、床上浸水被害の軽減を図っています。
韮山古川南条・渋川合流点付近
伊豆箱根鉄道橋梁架け替え工事
伊豆箱根鉄道駿豆線の韮山古川橋梁は川の中に2基の橋脚があったため、川の流れを阻害していました。そのため橋脚を撤去し、川を拡げました。
浸水対策の関連事業
床上浸水対策特別緊急事業に合わせ、伊豆の国市は排水機場や都市下水路の整備を行いました。県はこの事業の上下流でも川の断面を大きくすることに加え、水位観測所も設置しています。
宗光寺川
宗光寺川では、昭和33年9月の狩野川台風などで浸水被害が発生しました。宗光寺川の治水は、昭和52年に改修に着手し、平成14年までに集落がある平地部の約0.75km区間の改修が完了しました。狩野川合流点では、国により平成12年までに堤防、樋管及び排水機場が整備されました。狩野川合流点付近で合流する準用河川谷戸川は、旧大仁町(現、伊豆の国市)により平成13年度から改修が進められています。しかし、谷戸川流域では、国道に沿って市街化が低平地に及んでおり、この低平地を中心に平成10年9月、平成14年10月、平成16年10月に溢水や内水による浸水被害が発生しています。
戸沢川
戸沢川では、昭和49年7月、平成10年9月、平成14年10月、平成16年10月などに浸水被害が発生しました。戸沢川の治水は、昭和49年7月洪水や昭和53年の国による小坂樋管改築などを契機として昭和54年に改修に着手し、平成12年度までに狩野川合流点から支川の長瀬川流入点までの約1km区間の段階的な整備が完了しています。しかし、その上流部で密集市街地を流下する区間は、未改修で流下断面が狭いことに加え、支川の普通河川である長岡川が合流し、平成16年10月などには戸沢川や長岡川の溢水により、住宅の床上浸水や国道の冠水による通行止めなどの被害が発生しています。また、下流部では、狩野川合流点において平成12年に国の排水機場が整備されたが、狩野川の水位上昇時には溢水や内水による浸水被害が発生しており、特に平成16年10月は、狩野川台風以降で最大の被害となりました。
深沢川
深沢川では、昭和33年9月の狩野川台風で浸水被害が発生しました。深沢川の治水は、狩野川の神島捷水路工事にともなって下流部が整備され、引き続き昭和42年から集落が接する区間において改修が行われました。深沢川の溢水による浸水被害は近年発生していませんが、平成16年10月には、二次支川で内水による浸水が発生しました。