治水事業の沿革
伊東大川の治水事業等の沿革は、表4-6に示すとおりである。
伊東大川では、狩野川台風の洪水被害を契機に、「伊東大川総合開発補助事業全体計画」(昭和53年)が策定され、これに基づき、奥野ダム(平成元年竣工)が整備されている。
さらに、伊東大川総合開発補助事業全体計画を踏襲した上で、水源から河口までの一貫した河道計画として、「工事実施基本計画」(平成9年)が策定されている。
「伊東大川総合開発補助事業全体計画書」策定以前の河川整備に関して、同計画書によると、伊東大川は昭和33年まで原始河川のまま放置されていたが、昭和33年の狩野川台風により壊滅的被害を受け、昭和33、34年度に和泉橋の上下延長約2,000mの区間で護岸補修が行われ事が記述されている。ただし、この護岸整備は暫定的なものであり、当時は岡橋地点の流下能力が100m3/sであったことも記されている。
伊東大川の治水事業の沿革
伊東大川総合開発補助事業全体計画(昭和53年6月)
本計画は、昭和33年に発生した狩野川台風の洪水被害を契機に策定された奥野ダムの事業計画である。奥野ダムの諸元は表4-7に、また、貯水池流量配分図は図4-3に示すとおりである。
本計画では、奥野ダムの整備により、ダム地点で計画高水流量370m3/sのうち340m3/sを調節する計画としている。このため、ダム貯水池では洪水期(毎年7月1日~9月30日)においては、貯水位を135.5m以下に制限し、ダム貯水位の標高151.0m~135.5mまでの容量3,500,000m3を利用して洪水調節が行うこととしている。
さらに、奥野ダムは、洪水調節機能の以外にも、増大する伊東市の水需要に対応する水道用水の確保、及び流水の正常な機能(既得用水の補給等)の維持を目的とする多目的ダムとして計画している。
奥野ダム諸元
奥野ダム貯水池容量配分図
➀ 洪水調節
ダム地点での計画高水流量370m3/sのうち340m3/sを調節し、岡橋地点の計画高水流量550m3/sのうち280m3/sを調節する。
➁水道用水の確保
水需要の増大に対応し、伊東市に35,000m3/日を供給する。
③流水の正常な機能の維持
ダム地点で 0.117m3/s、大川浄水場地点で 0.251m3/s(1.0m3/s/km2)を確保する。
伊東大川水系工事実施基本計画(平成9年11月)
伊東大川の工事実施基本計画は、河川法改正(河川整備基本方針・河川整備計画の位置づけ)前の平成9年に策定している。当計画は、前述のダム計画以降に策定したものであり、「河川の工事の実施の基本となるべき計画に関する事項」には、ダム計画で定められた基本高水のピーク流量と計画高水流量を踏襲している。
また、河川工事の実施に関する事項としては、岡橋地点と大川橋地点の計画高水位と標準断面形が示されている。