瀬戸川水系

瀬戸川,山中沢川,ユキ沢,朝比奈川,葉梨川,市場川,岡部川,吐呂川,谷川川,野田沢川,青羽根川,梅田川,内瀬戸谷川,谷稲葉川,滝沢川,滝之谷川,石脇川

河川整備の基本理念

瀬戸川水系の河川は、大井川や天竜川のような大河川でもなく、むしろ気軽に接することができる河川であり、日常生活や農業用水利用,水遊び等を通じて、身近な「ふるさとの川」として認識されてきた。このように、瀬戸川水系の河川は大河川以上に地域に密着した大切な川である。特に子供達にとっては、川遊びを通じて自然の恵みや生命の尊さを学ぶことができる貴重な自然体験の場であると同時に、社会性を身につける上での貴重な交流の場であった。また、こうした子供時代の体験は地域住民の心の原風景をなし、大きな心理的財産となっている。
したがって、今後の瀬戸川水系における河川整備では、地域と川との深い関わりを重視し、治水・利水・環境のバランスのとれた地域に密着した「ふるさとの川」として、魅力のある川づくりを目指すものとし、今後の河川整備の基本理念を以下に掲げる。

安心して暮らせる川づくり

瀬戸川流域は、県都静岡市のベッドタウンとして都市化が進行しており、かつ、新東名高速道路や富士山静岡空港の完成に伴い、更なる発展が予想されることから、流域の社会的な重要性は今後も一層増していくことが予想される。
このため、洪水を安全に流下させるために、河積の拡大を図るとともに、関係機関と連携しながら災害情報伝達体制及び警戒避難体制の強化をはじめとしたソフト対策の強化も図り、流域の総合的な洪水対策を推進する。
また、東日本大震災を踏まえた大規模地震による津波に対する安全の確保などの課題に対しては、施設整備はもとより、ハード・ソフト対策を総合的に組み合わせた多重防御による津波防災を推進し、地域住民が「安心して暮らせる川づくり」を目指す。

「滝沢ばんばあ」の棲む川づくり

瀬戸川水系の河川は、多様性に富んだ生物の生息・生育・繁殖環境を育み、地域において「滝沢ばんばあ」の呼び名で親しまれるアカザや、ホトケドジョウなど多様な生物が生息し、活発な生命の営みを感じ取れる場として地域に親しまれてきた。
このように瀬戸川水系の河川における豊かな自然環境は「地域の財産」であるとともに、地域社会に限りない恵みをもたらし、流域の生活や文化の基礎を形成してきた。したがって、豊かな自然環境を保全し、後世へと良好な形で引き継ぐために、「『滝沢ばんばあ』の棲む川づくり」を目指す。

人々から愛される川づくり

瀬戸川水系の河川とその周辺地域の水と緑が織りなす多様で豊かな自然環境は、流域の人々だけでなく、県民にとっても身近に自然とふれあえる健全なレクリエーションの場として広く親しまれている。また、瀬戸川水系の河川は、川の氾濫の防止を祈願するとともに水死者の霊をなぐさめる「川除け地蔵」信仰や広い河川敷を利用した「とーろん(あげんだい)」、「朝比奈龍勢花火」などの川原文化といった地域の伝統・文化を育み、その発展に重要な役割を果たしてきた。
こうしたことから、多くの人々が集い、特に貴重な自然体験・交流の場として子供達が元気に走り回る、ほほえみあふれる水辺空間の創出を図り、「人々から愛される川づくり」を目指す。

河川整備の基本方針

瀬戸川河川整備の3つの理念を踏まえ、河川の総合的な保全と利用に関する基本方針を次の通りとする。

洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項

災害の発生の防止又は軽減に関しては、既往の洪水と河川の規模、流域内の資産・人口等を踏まえ、県内の他河川とのバランスを考慮し、治水施設の整備を基準地点(当目大橋)において、年超過確率1/50 規模の降雨による洪水を対象として実施するとともに、内水による浸水被害を防除するため、適切な内水対策を実施する。その際、多様な動植物が生息・生育・繁殖できる良好な河川環境の保全・創出等に配慮する。
さらに、関係機関や地域住民と連携して流域の保水機能の向上による流出抑制対策、水害の危険性が高い地域における土地利用の規制、水防体制の強化を働きかけるなど、流域と一体となった総合的な被害軽減対策を推進する。
河川津波対策に関しては、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「施設計画上の津波」に相当する計画津波に対しては、人命や財産を守るため、海岸等における防御と一体となって、河川堤防等の施設高を確保することとし、そのために必要となる堤防等の嵩上げ、耐震・液状化対策を実施することにより津波災害を防御するものとする。
発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす「最大クラスの津波」に対しては、施設対応を超過する事象として、住民等の生命を守ることを最優先とし、地域特性を踏まえ、関係自治体との連携により、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせた津波防災地域づくり等と一体となって減災を目指すとともに、「施設計画上の津波」対策の実施に当たっては、必要に応じて堤防の天端、裏法面、裏小段及び裏法尻に被覆等の措置を講じるものとする。

河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全に関する事項

瀬戸川の流量や流水の占用、動植物の保護、流水の清潔の保持、景観等を考慮し、合理的な水利用を促進する等、河川水の適正な利用と流水の正常な機能の維持に努める。
また、多様で豊かな自然環境との調和を図りながら、適正な河川空間利用を誘導し、人々の意識の中にごく自然に溶け込み、気軽に川とふれあうことができる「楽しく遊べる」水辺空間の創出に努める。
また、アカザに加え、アユ、アユカケ等の回遊魚の生息する多様性に富んだ生態系の生息・生育・繁殖環境を保全し、併せて、昔のより豊かであった河川環境の整備を目指して、多様な動植物が生息・生育・繁殖している瀬・淵の整備等多様な河川形状を確保する。
なお、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備・保全には、流域全体での取り組みが重要なことから、関係機関や流域住民の協力のもとに、ゲンジボタルやカワバタモロコの生息する小川等の保全を始めとして、森林の適正な管理、下水道整備、節水型の地域づくり等を働きかけていくものとする。
また、外来種については、関係機関と連携して移入回避や必要に応じて駆除等にも努める。

河川の維持管理に関する事項

災害の発生の防止、河川の適正な利用、河川環境の整備と保全等の観点から総合的に判断し、川の365 日を対象として、日々の管理を関係自治体や地域住民と連携して適切に行う。
特に、堤防、水門等の治水上重要な河川管理施設の機能を確保するため、平常時及び洪水時における巡視、点検を適切に実施し、河川管理施設及び河道の状態を的確に把握する。維持修繕、機能改善等を計画的に行うことにより、常に良好な状態を保持するよう努める。

地域との連携と地域発展に関する事項

流域自治体のまちづくりに関する計画や環境に関する施策との連携を図るとともに、住民参加等により、地域の声を河川整備に反映させ、川を通した地域の個性の創出と地域発展を目指す。
また、沿川の自然、歴史、文化施設や学校、公園、緑地等と一体的に利用でき、世代を越えた人々の心の交流の場、自然体験の場とするなど、人と地域に活力を与え、地域発展に寄与することを目指す。