大井川水系中流七曲りブロック

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治水に関する現状と課題

(1)過去の水害の実績

中流七曲りブロックにおける過去の水害は下表のとおりであり、昭和54年や平成3年の洪水をはじめ、これまでに多くの水害が発生してきた。
近年では、平成15年の台風10号による洪水や平成23年の台風12号、台風15号による洪水により浸水被害が発生している。

 大井川における主要洪水と被害の実績
大井川における主要洪水と被害の実績(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

昭和54年10月台風20号による洪水

10月6日にトラック島の南東海上で発生した台風20号は、12日には中心気圧が870hPaと、観測史上世界で最も低い気圧となるなど猛烈に発達した。その後やや衰えたものの、非常に強い勢力を保ったまま西日本に接近し、19日朝、和歌山県白浜町付近に上陸した。その後本州を縦断し東北地方から海上に出て、北海道東部に再上陸し、温帯低気圧に変わって再び発達した。
雨は台風が通過した19日11~14時に最も強く、最大1時間雨量は本川根79mm、井川64mmを観測した。
この降雨により静岡県全体で被害を受け、大井川では堤防決壊13箇所、家屋浸水62棟、複数箇所での崖崩れ等の災害記録が発生した。

 洪水の状況
洪水の状況(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

昭和57年8月台風10号による洪水

7月24日に日本の南東海上で発生した台風第10号は、8月1日に紀伊半島の南海上を北上、2日0時頃渥美半島に上陸し、2日早朝には富山湾から日本海に進んだ。2日15時には温帯低気圧に変わり、東北地方に接近した。
山間部を中心に日雨量400mm程度の降雨を記録した。静岡市山間部では橋などが流失し、道路が寸断、数日間にわたり井川地区が孤立する被害があった。

 洪水の状況
洪水の状況(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

昭和57年9月台風18号と前線による洪水

1)気象概況
昭和57年9月6日午前9時グアム島の西南西の海上で発生した台風18号は、発達しながら北西に進み、9日午前9時には南大東島の南東約600kmの海上で、中心気圧950ミリバール、中心付近の最大風速40m/sの大型で強い台風となり最盛期となった。

2)現象の特長
台風の接近に伴って、12日夜半すぎから強い雨が降り、午後からは、中伊豆地方の湯ヶ島、天城山で1時間70mmを超え、牧ノ原では13日16~17時までの1時間に91mmの豪雨が降った。

3)被害概況
台風が御前崎に上陸し、静岡県を縦断したため、大きな被害を受けた。
人的・家屋の被害をはじめ、道路の損壊等、公共土木施設及び農林水産業施設に大きな被害を与え、農林物産、商工業にも先の台風10号に引き続き、甚大な被害が生じた。

 昭和57年9月洪水の浸水被害状況
昭和57年9月洪水の浸水被害状況(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

平成3年9月台風18号・秋雨前線による洪水

台風18号の北上に伴い、秋雨前線が活発となり、本県全域に大雨を降らせ、水窪町(現浜松市)では時間雨量88mmを記録した。本川根町(現川根本町)では建設中の長島ダムの「仮締切」が半壊した他、NTTのケーブルの切断により、市外通話が不能になった。床上浸水52戸、床下浸水18戸の被害となった。

 大井川流域の等雨量線図
大井川流域の等雨量線図(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 平成3年9月洪水の浸水被害状況
平成3年9月洪水の浸水被害状況(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 平成3年9月洪水の浸水被害状況
平成3年9月洪水の浸水被害状況(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

平成15年8月台風10号による洪水

台風10号は、3日15時にフィリピンの東海上で台風となり、7日午後には中心気圧945hPa、最大風速40m/sと大型で強い勢力となって、次第に北北東に向きを変えて、8日早朝にかけて奄美諸島沿いに進んだ。8月7日~9日にかけては、台風の影響で南西諸島から本州付近の広い範囲で大雨となった。
川根本町では日降水量が233mmに達するなど、記録的大雨となった。

 地上天気図(平成15 年8月9日9時)
地上天気図(平成15年8月9日9時)(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 8月6日9時の予報(72時間)と9月9時までの実況(朱線)
8月6日9時の予報(72時間)と9月9時までの実況(朱線)(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 台風10号による期間降水量(mm)
台風10号による期間降水量(mm)(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 平成15年8月台風10号による浸水被害状況(青部地区)
平成15年8月台風10号による浸水被害状況(青部地区)(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

平成23年9月台風12号による洪水

台風12号は、25日9時にマリアナ諸島近海で台風となり、30日3時には小笠原諸島父島の西南西の海上に発達し、大型で強い勢力となった。
台風が四国沖に進んだ2日頃から、川根本町など山間部を中心に断続的に雨が激しくなり、4日昼過ぎまで激しい雨が降り続いた。最大72時間降水量が川根本町で年の極値を更新するなど記録的大雨となった。

 積算雨量分布図(8月31日9時~9月5日24時)
積算雨量分布図(8月31日9時~9月5日24時)出典:平成23年台風12号に関する静岡県気象速報(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 平成23年9月台風12号洪水の状況
平成23年9月台風12号洪水の状況(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

平成23年9月台風15号による洪水

13日21時に日本の南で発生した台風15号は、日本の南海上を北西に進み、19日21時に奄美大島近海で強い勢力となった。
19日19時頃から山間部を中心に雨が降り始め、静岡県を抜けるまで非常に激しい雨が降り続いた。最大24時間降水量は、川根本町で399.5mmを観測し、9月の極値を更新するなど記録的大雨となった。

 積算雨量分布図(9月19日19時~9月21日24時)
積算雨量分布図(9月19日19時~9月21日24時)出典:平成23年台風15号に関する静岡県気象速報(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 平成23年9月台風15号洪水の状況
平成23年9月台風15号洪水の状況(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

(2) 治水に関する課題

中流七曲りブロックでは、河川全体計画に基づく河川改修事業や洪水調節機能を有する長島ダムの建設などにより治水安全度は着実に向上しつつある。
しかしながら現状の治水安全度を見ると、島田市神座から塩郷堰堤までの区間では概ね年超過確率1/5規模の洪水を流下可能な断面を有している一方で、塩郷堰堤から寸又川合流点までの区間は年超過確率1/2~1/3規模の洪水を流せる程度であることから、治水安全度の更なる向上が求められている。
また、長島ダムでは、中流七曲りブロックの流下能力が低いことから、洪水時の放流量が制限され、大規模な洪水が発生した際には洪水調節機能が十分に発揮できない場合がある。
さらに、中流七曲りブロックの河道においては、支川からの土砂供給量が多いことなどから、土砂堆積によって河床が上昇し、洪水時の水位上昇の一因となっており、堆積土砂の継続的な排除による治水安全度の確保も求められている。
治水に対する住民意識について、流域住民にアンケート調査を実施したところ、浸水被害を経験したとの回答が全体の約1/4で、うち約半数が昭和57年以前に浸水被害を受けたと回答しており、近年は浸水被害の発生が少なく、かつ浸水被害を経験した住民が多くないことを示している。
しかし、河川の整備により浸水被害の発生が少なくなったものの、未だ多くの住民が治水対策を望んでいる。
また、地球温暖化に伴う気候変動などの影響により、近年、全国各地で集中豪雨による激甚な浸水被害が発生している状況を踏まえると、「施設の能力には限界があり、施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生する」との考えに立ち、大規模氾濫に対する減災を目指すため、河川改修などの「ハード対策」による治水安全度の向上を着実に図るとともに、防災情報の提供・伝達などの「ソフト対策」による地域住民の避難体制の強化促進を図っていく必要がある。

 住民アンケート調査の概要
住民アンケート調査の概要(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 水害の経験について(住民アンケート調査)
水害の経験について(住民アンケート調査)(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)

 今後の川づくりに希望するもの(住民アンケート調査)
今後の川づくりに希望するもの(住民アンケート調査)(出典:大井川水系中流七曲りブロック河川整備計画)