庵原川水系

庵原川,山切川

 河川整備の基本理念

庵原川流域は、上流域の庵原山地と下流域の清水平野からなり、中上流域の丘陵地には森林や果樹園が広がり、全国に3箇所しかない日本サッカー協会公認のトレーニング施設である清水ナショナルトレーニングセンターや、その名を全国に広めた「いはらみかん」の産地として、みかん等の樹園地等に利用されている。上流域には新東名高速道路が横断し、下流域の平地には東名高速道路、国道1号、JR東海道本線、JR東海道新幹線などの重要基幹交通網が横断し、概ね市街地が広がっており、河口部には特定重要港湾の清水港が整備され、県内産業の貿易拠点として重要な役割を担っている。
流域は自然に恵まれ、箇所ごとの状況に応じた多様な生態環境が形成されている。また、南面の丘陵地帯には縄文・弥生の時代からの遺跡のほか、地域の歴史や文化を伝える神社・仏閣が多く、駿河国が成立する大化の改新以前には「廬原国(五百原国)」の中心地があったともいわれており、歴史が古く、文化豊かな流域である。
一方で、庵原川流域の地形的特徴より、下流部における被害ポテンシャルが高いこと、また、流域内では新東名高速道路関連のジャンクションやインターチェンジなどが新たに整備されたことから、今後の流域内の都市化に伴う流出量の増加が懸念されるほか、上流域の山林の荒廃による保水力の低下も懸念されるところである。
このような、庵原川水系の現況及び社会的・歴史的背景を踏まえ、今後の庵原川水系の河川整備の基本理念は以下のとおりとする。

<基本理念>
高速道路網の整備や大規模な開発などに伴い、今後も流域の開発が予想されるが、これまで流域で育まれてきた「廬原国」の歴史や文化を後世に引き継いでいくため、次の事項に特に配慮し、治水・利用・環境が調和した河川整備を行う。

安全で安心して暮らせる川づくり

庵原川流域の地形的特徴より、下流部における被害ポテンシャルが高くなっている。また、今後の開発要請が強い地域特性から流域内の都市化に伴う流出量の増加や、上流域の山林の荒廃による保水力の低下により治水安全度の低下が懸念される。
このため、想定される降雨に対し、洪水を安全に流下させるため、治水施設の着実な整備及び適正な維持管理に努めるとともに、河川管理の視点から適正な土地利用や森林管理、土砂災害対策など他機関との連携による流域が一体となった総合的な治水対策を推進する。
また、災害による人的被害を軽減するため、より詳細な防災情報の提供はもとより、防災教育や地域との連携による防災体制の強化、地域防災力の向上を目指し、流域住民が「安全で安心して暮らせる川づくり」に努める。
さらに、東日本大震災を踏まえた大規模地震による津波に対する安全の確保などの課題に対しては、施設整備はもとより、ハード・ソフト対策を総合的に組み合わせた多重防御による津波防災を推進する。

自然・文化豊かな地域の暮らしを育む川づくり

庵原川では、清水の代名詞であるシロウオをはじめとし、箇所ごとの状況に応じた多様な生態環境が形成されている。また、流域内には縄文・弥生の時代からの遺跡のほか、地域の歴史や文化を伝える仏閣が多く存在するなど歴史が古く、文化豊かな流域である。
このため、現況で見られる多様な自然環境や庵原川が本来有していた自然環境の保全・再生に努めるとともに、周辺の歴史・文化との調和を図りながら、人が川とふれあうことのできる身近な水辺空間の創出に努める。さらに、地域の活発な河川愛護活動や環境学習を支援するなど、地域住民とともに「自然・文化豊かな地域の暮らしを育む川づくり」を目指す。

河川整備の基本方針

庵原川水系の河川整備の基本理念を踏まえ、河川の総合的な保全と利用に関する基本方針を次のとおりとする。

ア 洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項

災害の発生の防止または軽減に関しては、河川の規模、既往の洪水、流域内の資産・人口等を踏まえ、県内の他河川とのバランスを考慮し、年超過確率1/50規模の降雨による洪水を安全に流下させることのできる治水施設の整備を目指すものとする。
また、高潮被害や地震に伴い発生が予想される津波から、生命・財産の安全を確保することを目標とした治水施設の整備を目指す。また、新東名高速道路の開通によりさらなる市街化の進展が予想される地域であることから、土地利用計画との適切な調整、保水機能の適切な維持・増進などに加え、土砂や流木の流出を伴う洪水に対して浸水被害の軽減を図れるよう、適正な森林管理や土砂災害対策等を働きかけるなど、関係機関と連携し、流域が一体となった総合的な治水対策を推進する。
さらに、想定を超える洪水や整備途上段階での施設能力を超える洪水等の発生に対しては、平常時より関係機関、地域住民との連携を強化しながら地域防災力の向上を図り、水防活動や危険箇所の周知、洪水ハザードマップの整備、要配慮者対策への支援、リアルタイムの雨量・水位等の情報提供などのソフト対策により、生命の安全確保を最優先に被害軽減に努める。
河川津波対策に関しては、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「計画津波」に対しては、人命や財産を守るため、海岸等における防御と一体となって、河川堤防等の施設高を確保することとし、そのために必要となる堤防等の嵩上げ、耐震・液状化対策を実施することにより津波災害を防御するものとする。
発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす「最大クラスの津波」に対しては、施設対応を超過する事象として、住民等の生命を守ることを最優先とし、地域特性を踏まえ、関係自治体との連携により、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせた津波防災地域づくり等と一体となって減災を目指すとともに、「計画津波」対策の実施に当たっては、必要に応じて堤防の天端、裏法面、裏小段及び裏法尻に被覆等の措置を講じるものとする。

イ 河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全に関する事項

河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、今後も水利用に支障をきたさないよう、関係機関と調整し、流水の適正かつ合理的な利用が図られるよう努める。
河川環境の整備と保全に関しては、シロウオなど庵原川を代表する生物や、本来生息していたと想定される生物の生息・生育・繁殖環境が保全・再生されるよう、治水・利水との調和を図りながら、河川上下流の連続性や海及び河川周辺との繋がりの確保、特定外来生物への対応など、河道内植生や魚類等水生生物の生息・生育・繁殖環境に配慮した整備を推進する。
また、整備に際しては、有識者、地域住民等との連携のもとに、目指すべき環境について関係者が共通の目標を持ちながら取組み、周辺の歴史・文化との調和を図りながら、人が川とふれあうことのできる身近な水辺空間の維持・創出に努める。

ウ 河川の維持管理に関する事項

河川の維持管理に関しては、災害の発生の防止、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全の観点から、これまでの河川整備の履歴を踏まえながら河川の持つ多面的機能が十分に発揮できるよう、地域住民や関係機関などと協働して、堤防や護岸等の治水施設の状態や河道の自然環境、土砂堆積に関するモニタリングや点検を行い、必要に応じて整備・修繕を実施する。
特に、堤防等の治水上重要な河川管理施設の機能を確保するため、平常時及び洪水時における巡視、点検を適切に実施し、河川管理施設及び河道の状態を的確に把握する。維持修繕、機能改善等を計画的に行うことにより、常に良好な状態を保持するよう努める。

エ 地域との連携と地域発展に関する事項

住民による継続的な河川愛護活動や遊歩道整備が行われるなど、川に対する意識が高い庵原川流域において、この流域の歴史・文化・風土、豊かな自然環境を踏まえ、個性を活かした流域の発展のため、関係自治体のまちづくりに関する諸計画との調整を図りつつ、地域住民や企業など関係機関との協働による河川整備を推進する。
また、日常生活での河川と地域住民との接点が増え、防災意識や河川愛護の精神が育まれ受継がれていくよう、庵原川流域における自然環境の特徴、水害リスクや特性ならびに特色ある歴史・文化などに関する情報を幅広く提供する。さらに、住民の自発的な川づくりへの参画を促し、主体的な住民活動が流域全体に広がるよう連携や支援を推進し、地域防災力の向上や良好な地域のネットワーク、コミュニティの強化を図ることにより地域社会の発展に寄与する。