下流域の生物
船明ダムから河口に至る天竜川下流域では、扇状地が広がり砂礫主体の「白い河原」が景観の基をなしています。また、河口部や支川合流部にはワンドや湿地、樹林などの環境・景観が形成されています。
下流部では広い川幅に複列砂州が形成され、瀬と淵が連続しています。広い砂礫河原はコアジサシが営巣地として利用し、瀬や淵はアユやウツセミカジカ、アユカケ(カマキリ)等の回遊魚が生息しています。こうした現状に対して砂州が単列化したり固定化してしまうことにより、ヤナギ等による樹林化が進み、シナダレスズメガヤ等の外来生物が増加しています。
また、流下能力を向上させる目的から河道掘削が必要な区間において、アユの産卵場やコアジサシの営巣地となっている箇所があることから、こうした自然環境への配慮が必要となっています。
アユ
河口部の環境
海に近い河口部では、ワンドや湿地環境が観られます。そこではタコノアシやカワヂシャ、ヨシ群落等の植物が生育し、鳥類のオオヨシキリや、カヤネズミ等の哺乳類が生息したり繁殖しています。
また、安間川や一雲済川の合流部のワンドや湿地には、ヨシ群落や樹林等の多様な植物環境が観られ、水辺にはメダカ等が生息しています。しかし一方では、チワラスボ、イシカワシラウオ等の魚類が生息する湿地環境が、派川の締め切り等によって減少しています。こうした湿地環境は、静岡県レッドデータブックで「今残したい大切な自然」に選定され、極力保全することが求められています。
また、治水上から河道掘削が必要となっているワンドや干潟では、多様な自然環境への配慮が必要となっています。
安間川の環境
安間川沿川では、豊かな自然環境が残されているのは下流部の旧天竜川西派川周辺のみです。中流部も河川改修によって蛇行や瀬・淵などの流れの変化が乏しくなっていますが、ウグイ、オイカワ、フナ類などの魚類が生息し、ハクセキレイ、カモ類、サギ類などの鳥類が飛来するなど、生物の多様性は上流部よりも豊かです。
下流部は、安間川では唯一の自然豊かで開放的な空間が広がり、高水敷にはエノキ等の河畔林が形成され、自然河岸の水際にはヨシ群落が形成されています。ヌマチチブやオイカワなどのほかメダカも生息し、これらの魚類を捕食するカワセミが生息します。
また、かつての天竜川西派川への合流点付近では、水生植物のイトモやミクリが見られ、湧水の存在を示唆しています。
一雲済川の環境
一雲済川の上流域は、優れた森林景観や渓流の中を清流が流れ、ホトケドジョウ、ナガレホトケドジョウ、アカザが生息する良好な環境を有しています。
田園地帯を流下する中下流域は、農業用排水路の一部として整備されていたことから直線的な河道となっていますが、植物が繁茂し多様な水辺環境を形成しており、スジシマドジョウ小型種・メダカ・アユカケ及びカワバタモロコといった貴重な種の他、アユ、オイカワ等10科29種の魚類の生息が確認されています。
鳥類については、現地調査によりカワセミ、ダイサギ、アオサギ等が確認されています。