志太田中川水系

志太田中川,泉川

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現状と課題まとめ

志太田中川水系では、環境基準は設定されていないが、経年的に水質調査が行われている。志太田中川・泉川とも概ねB類型(BOD3mg/L以下)が保持されており、良好である。今後とも生活排水処理施設や事業所排水処理施設の整備について関係機関に対策を求めていく必要がある。

志太田中川・泉川は、かつてかんがい排水路としての整備や河川改修により、単調な河道が形成されている区間が多い。しかし、河川と海を行き来するアユ、ウグイ(降海型)、ヨシノボリ類、ハゼ類、アユカケ、カワアナゴ、ウナギなどの回遊性魚類、背後の水路や水田と行き来するフナ、ナマズ類、湧水の影響のある箇所を好むアブラハヤ、止水域・緩流域を好むメダカなど、貴重種を含め志太田中川の特性に寄与した多用な種が見られる。
生物の生息環境として、河川上下流の連続性や海とのつながり、背後の水路や水田とのつながり、湧水や地下水とのつながりなどに配慮していくことが重要となる。
一方、志太田中川・泉川ともコイの生息密度が高いことにより、他の生物の生息環境に悪影響を与えていることも伺える。
水生植物も豊かで、湧水の影響のある箇所を好むナガエミクリや、地域であまり見られなくなってきているコウホネなども生育している。特定外来種は確認されていないが、外来種の進入割合は高く、今後も注意を要する。

志太田中川流域の水を取り巻く環境は、大井川用水に大きく依存しているといえる。志太田中川流域は山地がなく自流は見込めないものの、大井川の湧水による影響が期待できる。
一方、平成20年に行なった流量観測では、渇水期において志太田中川田中排水機場前(河口より0.7km地点)において、0.58m3/sであり、比流量(9.1m3/s/100km2)は全国一級河川の平均維持流量(0.69m3/s/100km2)と比べて著しく大きい。これは、非かんがい期でもかんがい期の3割程度が導水されていることによる影響であるといえる。
このため、現在、志太田中川水系の河川で形成されている河川環境は大井川用水の流入により成り立っていると捉えることができ、大井川からの水の恵みが河川における動植物の多様な生育・生息空間を支え、地域の水辺環境が形づくられ、河川景観を形成している。

また、アンケート調査において、「水質」については、「汚い、やや汚い」が3割を超え、「きれい、ややきれい」を上回っており、今の状態では不十分であることも伺える。「これからの志太田中川、泉川では何が最も重要だと思いますか」という設問に対しては、「水がきれいでさまざまな生き物が棲んでいること」が3割を超え、最も多く、地域からも自然環境豊かな河川が望まれていることが伺える。都市化、市街化の進む流域にあって、志太田中川水系の河川が有している現在の自然環境について、流域住民がその希少性や重要性を十分に理解し、流域住民共通の認識のもと、河川の自然環境を守り、後世に受け継ぐよう住民、市民団体、学識者、行政などの様々な主体が治水、利水、環境の調和のとれた河川環境の整備に携わることで、流域における公共の福祉の増進に寄与することが求められている。