坂口谷川水系

坂口谷川

河川整備の基本理念

坂口谷川水系と流域の現状及び特性を踏まえ、今後の河川整備の基本理念を以下に掲げる。

安全で安心して暮らせる川づくり

・治水安全度の低い箇所の治水施設整備と既存施設が十分機能を発揮するための適切な維持管理に努める。
・利便性が向上し、今後も新たな開発が見込まれる流域特性を踏まえ、開発による治水安全度の低下を招かぬよう、適正な土地利用の誘導に努めるほか、森林管理、土砂災害対策など流域における対策を関係機関に働きかけ、流域一体となった総合的な治水対策を推進する。
・流域市町における諸計画との連携を図り、ハード・ソフト対策を組み合わせた総合的な治水対策を講じることで、想定を超える災害に対しても被害の軽減を図る。
・大規模地震による津波に対しては、施設整備はもとより、ハード・ソフト対策を総合的に組み合わせた多重防御による津波防災を推進する。

水辺空間を楽しめる川づくり

・既存施設の治水機能を維持しつつ、多様な動植物の生息・生育・繁殖環境の保全・復元・創出に努める。
・流域の貴重な自然環境や歴史・文化等について、関係機関や地域住民等と共通の認識を持ち、地域の河川愛護活動や環境学習を積極的に支援するとともに、人と川との身近な関係の構築を目指す。
・川辺に腰掛けて釣りを楽しみたくなる水と緑に親しめる潤いのある水辺空間づくりを行い、地域住民や訪れる人々の交流や連携の軸となる河川整備に努める。

河川整備の基本方針

坂口谷川水系の河川整備の基本理念を踏まえ、河川の総合的な保全と利用に関する基本方針を次のとおりとする。

ア 洪水、津波、高潮等による災害の発生防止または軽減に関する事項

災害の発生の防止または軽減に関しては、河川の規模、既往の洪水、流域内の資産・人口等を踏まえ、県内の他河川とのバランスを考慮し、年超過確率1/50 年の規模の降雨に対して、生命・財産の安全確保を目標とし、洪水を安全に流下させる治水施設の整備を目指す。
また、交流の拠点としての地域特性より、さらなる市街化の進展が予想されることから、洪水等に対して浸水被害の軽減が図れるよう、水位観測等による水量の定期的なモニタリング、適正な土地利用の誘導等、関係機関との連絡調整・連携による流域が一体となった総合的な治水対策を推進する。
河川津波対策に関しては、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「計画津波」に対しては、人命や財産を守るため、海岸等における防御と一体となって、河川堤防等の施設高を確保することとし、そのために必要となる堤防等の嵩上げ、耐震・液状化対策を実施することにより津波災害を防御するものとする。
発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす「最大クラスの津波」に対しては、施設対応を超過する事象として、住民等の生命を守ることを最優先とし、地域特性を踏まえ、関係自治体との連携により、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせた津波防災地域づくり等と一体となって減災を目指すとともに、「計画津波」対策の実施に当たっては、必要に応じて堤防の天端、裏法面、裏小段及び裏法尻に被覆等の措置を講じるものとする。
計画規模を上回る洪水や整備途上段階での施設能力を超える洪水・高潮等の発生に対しては、平常時より水防活動や危険箇所の周知、要配慮者対策への支援、リアルタイムの雨量・水位等の情報提供などのソフト対策を推進するとともに、市街地の増加や主要交通などの都市資産が集積する土地利用状況など、洪水・高潮等の被害リスクの高い河川であることを地域住民 へ周知することで地域防災力の向上に関わる取組みの実施・支援に努める。

イ 河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全に関する事項

河川水の利用、流水の正常な機能の維持に関しては、関係機関と連携して、適正な水利用の推進を図る。
河川環境の整備と保全に関しては、治水・利水面と調和を図り、生物の多様性と連続性の保全・復元・創出に努める。特に坂口谷川の河口部には生物の多様性を育むヨシ原が広がっており、良好な汽水域があるため、こうした自然環境の保全に努めるとともに、河川巡視等を通じて、特定外来生物などの保全上の課題が認められる場合には、関係機関と連携し、必要な措置を講じる。
関係機関やNPO、地域住民との連携のもと、必要に応じて有識者の参加を得て、流域の目指すべき環境について共通の目標を持ちながら、必要な整備に取組み、癒しや安らぎを与える水と緑の水辺空間、川と触れ合える利用しやすい親水施設の整備に努め、地域の交流や連携の軸となる貴重なオープンスペースを創出する。

ウ 河川の維持管理に関する事項

河川の維持管理に関しては、災害の発生の防止、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持および河川環境の整備と保全の観点から、これまでの河川整備の履歴を踏まえ、河川の持つ多面的機能が十分に発揮できるよう、堤防、護岸等の維持管理や修繕を適切に行う。
特に、堤防、水門等の治水上重要な河川管理施設の機能を確保するため、平常時及び洪水時における巡視、点検を適切に実施し、河川管理施設及び河道の状態を的確に把握する。維持修繕、機能改善等を計画的に行うことにより、常に良好な状態を保持するよう努める。
また、地域住民の河川への関心の向上や、生物の移動に必要となる縦横断的な連続性を視野に入れ、階段、スロープ等の親水施設整備や魚道の整備・維持管理を推進するとともに、水辺空間を利用する際にも安心して利用できるよう配慮する。
なお、河川の維持管理は、日頃から川に接する機会の多い地域住民の理解と協力が必要不可欠であり、地域住民や関係機関と連携して、河道の土砂堆積、植生繁茂に関するモニタリングや点検を行うとともに、堤防の除草等についても、引き続き地域住民の協力を得るなど、行政と地域住民の担う役割を整理し、今後も適正な維持管理を行っていく。
また、許可工作物についても適切な維持管理や洪水時の操作等を行うよう施設管理者に働きかける。

エ 地域との連携と地域発展に関する事項

流域の自然・風土を踏まえ、地域の発展のため、関係自治体のまちづくりに関する計画との連携や調整を図りつつ、地域住民や関係機関との協働による河川整備を推進する。
水質や環境の美化が河川利用の促進につながると考える住民は多く、これまでも住民主体による河川清掃活動が積極的に行われてきたことから、今後も市民の河川における諸活動を積極的に支援し、身近な河川環境の保護に関する意識啓発や、地域住民の自発的な川づくりに関する取組みを促す。
河川情報を幅広く提供し、地域住民の川に接する機会や川に関する環境、防災教育等の場の創出に努め、世代を超えた人々の交流を積極的に支援することで、川に関する知識や知恵を育むとともに、要配慮者対策を支援し、さらなる地域防災力の向上を図る。
地域住民に河川愛護の精神が育まれ、良好な状態で将来に受継がれていくように、水と緑に親しめる潤いのある河川空間の創出を目指す。