都田川水系

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治水の現状と課題

洪水に対する安全性の確保

静岡県では、確率規模で年超過確率1/5規模の洪水に対応できる河川整備を目指している。しかし、堀留川や東神田川など、この水準が確保されていない河川は多く、流域内では、昭和49年や昭和50年の洪水を始め、多くの水害が発生してきた。
井伊谷川とその支川神宮寺川では、昭和49年7月洪水で破堤し、都田川の氾濫と相まって激甚な浸水被害が発生している。昭和47年度からの改修で、この浸水被害対策を進めているが、未だ完了していない。また、平成23年9月洪水では神宮寺川の横尾地区において堤防から越水が発生し、床上浸水1戸が発生した。併せて農地湛水も発生しており、地元から対策の要望が挙がっている。
新川では、昭和49年7月と昭和50年10月に広い範囲で家屋被害を伴う浸水被害が発生している。昭和50年洪水は、新川流域全体で浸水家屋2,689戸の激甚な被害となり、記録の残る上で既往最大被害となった。昭和48年より進めている改修により、この水害対応を進めているが、佐鳴湖の築堤事業が未だ完了していない。
九領川では、新川流域全体に激甚な被害をもたらした昭和50年10月洪水により、床上・床下浸水126戸浸水被害が発生している。近年でも、平成6年9月洪水で床上・床下浸水6戸、平成16年11月洪水で床下浸水1戸の被害が発生している。昭和61年度より、これらの水害対応を進めているが、未だ完了していない。
東神田川では、新川流域の他河川と同様に昭和49年7月洪水及び昭和50年10月洪水で、家屋被害を伴う広範な浸水が発生した。昭和56年度より、航空自衛隊浜松基地設置に伴う障害(洪水の流出増)に対する措置とあわせて、水害対策を進めているが、未だ完了していない。
堀留川では、新川流域の他河川と同様に昭和49年7月洪水及び昭和50年10月洪水で、家屋被害を伴う広範な浸水が発生した。近年も、支流である鴨江排水路や菅原水路周辺で、浸水被害が頻発しているが、未だ対策は実施していない。 その他、東部地域の三方原台地周辺に刻まれた開析谷や北部地域の湖北連峰、西部地域の湖西連峰を流下する河川は、勾配が急で流れが速いことから河岸の崩壊や河床の低下を起こしやすく、周辺の土地に影響を及ぼす恐れがある。宇利山川では、平成15年7月洪水で約80mの河岸決壊が生じるなど、局所的な被害が発生している。また、平野部では、山地から流出した土砂が堆積し、日比沢川などで、河道の洪水流下を妨げ、洪水氾濫の危険性を高める状況が発生している。このため、現象や周辺の土地利用を踏まえ、状況に応じた局所的な対応を行う必要がある。
これらの水害に対する流域住民の不安を解消し安全・安心をもたらすため、既往の洪水被害について、その解消を図る必要があるが、事業量を勘案すると、当計画の対象期間内に同水準を確保することは難しい。このため、当水系の河川整備では、守るべき人口や資産が集中するなど、社会的に「重要度が高い」区間や、家屋被害を伴う浸水の残る区間や同被害への対策が実施されていない「緊急度の高い」区間を優先的に実施するなど、治水対策の重点化を図る必要がある。
ただし、無秩序な河川整備は、資産の集中した下流部の危険性を高める可能性もあることから、上下流の改修状況などを踏まえ、経済的に妥当な範囲で対策を図ることが必要である。
また、整備予定箇所が公園と重複しているなど、他事業と連携して整備することで、より効用の高い施設を効率的に整備することが可能な箇所がある。これらの箇所については、双方の効果がより早期に発揮されるよう、関係機関と施工時期などについて十分調整することが必要である。

 都田川水系浸水実績図

図2-1 都田川水系浸水実績図(出典:都田川水系河川整備計画)

表2-1 過去の主な洪水と洪水被害
発生年月日 気象要因 被害状況
昭和46年8月31日 台風23号 ・床上浸水20戸、床下浸水191戸(旧三ケ日町)
・浸水家屋230戸(旧浜松市等)
昭和49年7月7日 台風8号 ・全壊15戸、半壊23戸、床上浸水465戸、床下浸水566戸、田畑流出160ha(旧細江町)
・全壊4戸、半壊10戸、流出1戸、床上浸水104戸、床下浸水533戸、死者1名(旧三ケ日町)
・床下浸水69戸(旧新居町)
・全壊2戸、半壊1戸、一部破損6戸、床上浸水78戸、床下浸水441戸、田畑流出56ha(旧引佐町)
・半壊17戸、床上浸水170戸、床下浸水1,000戸、田畑流出5町歩(約5ha)、冠水340町歩(約337ha)(旧雄踏町)
・全壊14戸、半壊10戸、一部破損18戸、床上浸水267戸、床下浸水770戸、田畑流出40ha、冠水356ha(湖西市)
昭和50年10月7日 集中豪雨 ・床上浸水8戸、床下浸水213戸(旧新居町)
・浸水家屋2,689戸(旧浜松市等)
平成2年9月30日 台風20号 ・床上浸水3戸、床下浸水71戸(旧細江町)
・床下浸水3戸(旧三ケ日町)
・一部破損2戸、床上浸水41戸、床下浸水811戸、田畑冠水492ha(湖西市)
・床上浸水17戸、床下浸水160戸(旧浜松市)
平成6年9月17日 秋雨前線 ・床上浸水49戸、床下浸水111戸(旧浜松市)
平成16年11月10日 集中豪雨 ・床上浸水5戸、床下浸水110戸(旧浜松市)

浜名湖に面する平野や都田川と井伊谷川の中下流域に広がる平野、新川中下流域などは、沖積作用と埋立てにより形成された標高の低い低平地が多く、破堤などにより洪水が溢れると氾濫が広がりやすい特徴を持っている。
一方で、市街地は、この氾濫原に形成されているものが多く、特に、都田川流域では旧細江町と引佐町の市街地、新川流域では浜松市中央区の市街地を氾濫域に抱えており、流域内の他河川と比較しても格段に多くの人口や資産が集中している。
ここで破堤等の災害が発生すると、多くの人々に危害が及び、集積した莫大な資産が損なわれる恐れがある。それとともに、(国)362号や(主)浜松環状線など、物流・交通を支える道路網や通信網、都市基盤施設が被害を受けることで、県西部地域の社会や経済にも大きなダメージを与える。そのため、社会的に重大な被害を引起す恐れのある都田川流域や新川流域では、重点的に治水整備を実施し、より高い治水整備水準を目指す必要がある。
また、低平地では、河川の水位が高くなると、堤内地の水が河川に排水できなくなり湛水が生じる、いわゆる「内水」地域を抱える河川が多い。近年でも、堀留川の流域などで、局地的な内水被害が発生している。内水を受け入れる能力を持った河川の整備とともに、樋管の維持管理と洪水時の操作、流域における貯留やポンプによる湛水排除など、流域内の関係機関で実施される流域対策との連携が課題となっている。

高潮、津波に対する安全性の確保

浜名湖では、外海と通じた広い湖面を持つことから、高潮による被害も発生している。
浜松市では、平成19年7月台風4号で床下浸水16戸(旧三ヶ日町神明川付近)の高潮被害が発生しているほか、平成24年9月台風17号で、猪鼻湖西岸の国道301号が通行止めとなる被害が発生した。また、湖西市の松見ヶ浦(今川)では、平成16年10月に、準用河川カン寺川合流点付近で床下浸水1件が発生している。
津波対策に関しては、「計画津波」に対しては、人命や財産を守るため、海岸等における防御と一体となって、河川堤防等の施設高を確保することとし、そのために必要となる堤防等の嵩上げ、耐震・液状化対策を実施することにより津波災害を防御する必要がある。「最大クラスの津波」に対しては、施設対応を超過する事象として、住民等の連携により、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせた津波防災地域づくり等と一体となって減災を目指す必要がある。
また、浜名湖には河川区域、港湾区域及び漁港区域等が存在するとともに、湖岸堤の管理者も河川、港湾、漁港、農林等、多機関にわたるため、各管理者間で防護レベルならびに改修時期や改修の実施主体等に係る協議、調整が必要である。また、約100kmにわたる湖岸堤に官堤、民堤が混在しているが、民堤区間の実態を把握するとともに、民堤区間における対策手法や対策の実施主体について、地域住民と十分に協議し、合意形成を図った上で事業展開する必要がある。