都田川,旧新川,新川,九領川,堀留川,東神田川,段子川,権現谷川,伊佐地川,花川,和地大谷川,笠子川,坊瀬川,入出太田川,今川,西神田川,釣橋川,宇利山川,日比沢川,南川,平山川,川名宮川,宇志川,都筑大谷川,井伊谷川,神宮寺川,陣座川,灰ノ木川,獺淵川
都田川水系は流域面積524km2を誇る県下二級河川では最大の水系である。随時、河川改修事業により整備を進めているところであるが、治水安全度は未だ十分ではなく、台風や集中豪雨に伴う出水により甚大な被害の恐れがあるため、水害に対する安全性の向上が強く望まれている。
一方、地域住民の意識は潤いやゆとりの質的豊かさを求める傾向にあり、都田川水系は、貴重な水と緑の空間として地域社会への潤いの提供と、まちの景観形成や余暇の有効利用などにおいて重要な役割が期待されている。
このような背景から、静岡県では、治水・利水・環境が調和するとともに地域にとってかけがえのない川づくりの具体的な計画を定める「都田川水系河川整備計画」を策定することとした。
今回の「都田川水系河川整備計画」は、河川法第十六条の二第1項の規定に基づき、河川管理者である静岡県と浜松市が、河川整備計画の上位計画であり静岡県河川審議会における議論を踏まえて平成26年2月に策定された「都田川水系河川整備基本方針」に沿って、今後概ね30年の間に行う都田川水系の各河川の整備に関する計画(河川工事・河川維持など)を定めたものである。
なお、今回の計画策定にあたっては、住民の代表者や建設工学、生物、環境、景観、水質、歴史・文化、水産、農業利水など、各分野の専門家からなる「都田川水系流域委員会」を設立し、流域内の治水施設の整備、流域内の生物や植物の良好な生息環境の保全と創出及び憩いの空間としての利用など、幅広い意見を聴きながら検討を行うとともに、流域住民アンケートや「堀留川を考える住民会議」あるいは河川整備計画(原案)に関するパブリックコメントや意見交換会等、様々な段階で地域住民の方々からの参画を得て策定したものである。
今後概ね30年の間において、本計画に基づき計画的に河川の整備を実施することとなるが、河川の整備にあたっては、河川法の目的にのっとり、治水・利水・環境の調和を図るため、調査、計画、設計、施工、維持管理等の各段階を通じて、必要に応じて学識者の知見を踏まえるとともに、関係機関や地域住民との協働を進めながら整備を行うものとする。
都田川水系の流域と河川の現状及び課題を踏まえ、今後の河川整備にあたっての基本理念を以下に掲げるものとする。なお、この基本理念は河川整備計画の上位計画となる河川整備基本方針の策定作業において、静岡県河川審議会における議論を踏まえて設定されたものである。
古くから人々の生活が営まれてきた浜名湖では、今切口が決壊したことによる高潮や津波による水害が繰り返し発生しており、東海・東南海・南海地震による津波被害も想定されている。また、浜名湖に流れ込み、都田川に代表される各河川では、洪水による水害が繰り返し発生しているほか、生物的な貴重種なども多く確認されている。
このため、今後とも洪水や高潮・津波に対して地域住民等の安全確保を最優先した対策を進めるとともに、現在の良好な河川環境、景観の保全に努め、「安全で、安心でき、豊かで活力のある美しい川づくり」を目指す。
都田川水系は、浜名湖を介して内陸の奥深い河川まで外海がつながりをもち、海水と真水が交わる浜名湖は、河川からの洪水や外海からの津波・高潮に対して緩衝帯となっており、防災上、重要な働きをしている。
山、森、里、川と海が健全な水の循環でつながっていることによって、陸域から水域への栄養分や土砂の供給、有機物の生産と食物連鎖、生物の移動が成り立ち、多様な生物相と豊かな生物生産の持続が可能となることから、水質と併せて良好な底質環境を保全していく必要がある。このため、「水といのちのつながり」を大切にした川づくりを目指す。
都田川や浜名湖などの水辺は、古くは人々の生活の場であったが、近年、漁業だけではなく、海洋性リクリエーション志向が高まり、浜名湖を中心に外海や河川と行き交うことで、多種多様な利用がされていることから、今日でも水辺は自然や文化を学び、豊かな人間性を育む貴重な空間であり、今後も保全、創出する必要がある。このため、「くらしと水辺のつながり」を大切にした川づくりを目指す。
人と人のつながりによって、水害や川遊びなど川や湖に関わる経験則や知恵や情報が蓄積され、共有され、伝えられることが、川や湖を善く知り善く付き合う上で重要である。このため、多種多様な住民活動が活発になり、そのつながりに広がりをもつよう支援するなど、「人と人のつながり」を大切にした川づくりを目指す。
本整備計画の対象区間は、都田川水系の河川のうち、下記に示す河川の県及び浜松市管理区間とする。
水系名 |
河川名湖名 |
管理者 |
区間 | 備考 | |||
起点 | 終点 | 延長(m) | 指定(認定)年月日 | 区域指定年月日など | |||
都田川水系 | 都田川 | 静岡県 | 寺野川合流点 | 海にいたる | 49,940 | S41.4.1 S46.4.1 |
昭和50.3.31 告示第367号 |
〃 | 旧新川 | 静岡県 | 浜松市入野町19954番の140地先の市道佐鳴湖橋 | 新川への合流点 | 1,600 | H12.7.7 | 〃 |
〃 | 新川(佐鳴湖) | 静岡県 | 左岸浜松市和合町322番の2地先右岸 浜松市和合町321番地先 | 新川への合流点 | 13,830 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 九領川 | 浜松市 | 浜松市大久保町字東村前367番の1地先の県道大久保橋 | 新川への合流点 | 3,500 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 堀留川 | 静岡県 | 静岡県浜名郡可美村東若林字四ツ枝154番地先の国道1号線鎧橋 | 新川への合流点 | 4,060 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 東神田川 | 静岡県 | 浜松市西山町1835番地先の市道橋 | 新川への合流点 | 5,610 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 段子川 | 浜松市 | 浜松市萩町1334番の7地先の市道暗渠 | 新川への合流点 | 5,170 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 権現谷川 | 浜松市 | 浜松市和泉町831番の207地先の市道暗渠 | 段子川への合流点 | 3,400 | S46.4.1 S48.4.1 |
〃 |
〃 | 伊佐地川 | 静岡県 | 浜松市湖東町字向新田4223番地先の市道長池橋 | 都田川への合流点 | 3,250 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 花川 | 静岡県 | 浜松市吉野東町字二ノ平山84番地先の砂防堰堤 | 都田川への合流点 | 5,200 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 和地大谷川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡細江町中川字広見7351番の1地先の県道大谷橋 | 花川への合流点 | 2,200 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 笠子川 | 静岡県 | 筒川合流点 | 都田川への合流点 | 3,020 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 坊瀬川 | 静岡県 | 湖西市坊瀬503番地先の一本松合流点 | 笠子川への合流点 | 2,800 | S48.4.1 | 〃 |
〃 | 入出太田川 | 静岡県 | 小俣川合流点 | 都田川への合流点 | 3,100 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 今川 | 静岡県 | 一本杉沢合流点 | 都田川への合流点 | 3,730 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
出展:「静岡県河川指定調書(平成26年4月30日現在)静岡県交通基盤部河川砂防管理課
水系名 |
河川名湖名 |
管理者 |
区間 | 備考 | |||
起点 | 終点 | 延長(m) | 指定(認定)年月日 | 区域指定年月日など | |||
〃 | 西神田川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡三ヶ日町上尾奈字西田435番の1地先の町道西田橋 | 釣橋川への合流点 | 3,120 | S41.4.1 S46.4.1 S49.4.1 |
〃 |
〃 | 釣橋川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡三ケ日町只木字トヲズ480番の1地先の県道外淵橋 | 都田川への合流点 | 5,770 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 宇利山川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡三ケ日町平山字ヨリ合田305番地先の県道広田橋 | 釣橋川への合流点 | 3,350 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 日比沢川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡三ヶ日町本坂字西川地674番地先の町道西川地橋 | 釣橋川への合流点 | 4,420 | S41.4.1 S46.4.1 S49.4.1 |
〃 |
〃 | 南川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡三ヶ日町本坂字坂下188番の1地先の農業用水牛田堰 | 日比沢川への合流点 | 1,350 | S46.4.1 | 〃 |
〃 | 平山川 | 静岡県 | 北山沢合流点 | 宇利山川への合流点 | 3,050 | S46.4.1 | 〃 |
〃 | 川名宮川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡三ヶ日町只木字川名宮1365番地先の町道川名宮橋 | 釣橋川への合流点 | 2,050 | S46.4.1 | 〃 |
〃 | 宇志川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡三ヶ日町宇志字山田1179番の1地先の東名高速道路橋床固工 | 釣橋川への合流点 | 1,120 | S49.4.1 | 〃 |
〃 | 都筑大谷川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡三ヶ日町大谷字地領232番の1地先の町道地領橋 | 釣橋川への合流点 | 3,720 | S41.4.1 S46.4.1 S49.4.11 |
〃 |
〃 | 井伊谷川 | 静岡県 | 小谷沢川合流点 | 都田川への合流点 | 10,070 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 神宮寺川 | 静岡県 | 谷沢川合流点 | 井伊谷川への合流点 | 9,300 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 陣座川 | 静岡県 | 静岡県引佐郡引佐町狩宿字陣坂口119番地先の町道陣座坂橋 | 神宮寺川への合流点 | 1,650 | S46.4.1 | 〃 |
〃 | 灰ノ木川 | 静岡県 | 椎平沢合流点 | 都田川への合流点 | 4,260 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
〃 | 獺淵川 | 静岡県 | 別所川合流点 | 都田川への合流点 | 2,500 | S41.4.1 S46.4.1 |
〃 |
出展:「静岡県河川指定調書(平成26年4月30日現在)静岡県交通基盤部河川砂防管理課
本河川整備計画の対象期間は概ね30年間とする。
なお、本計画は、現時点における流域の社会経済状況、自然環境、河道状況等を前提として策定するものであり、策定後のこれらの変化や新たな知見、技術の進歩等により必要がある場合には、対象期間内であっても適宜見直しを行う。
洪水による災害の発生の防止又は軽減に関する目標は、近年において被害をもたらした洪水と同規模の洪水を安全に流下させることを基本とする。ただし、目標の設定にあたっては、人口や資産の状況及び上下流の整備バランス、県内の他河川との安全性の均衡などを考慮して定める。
都田川、井伊谷川では、年超過確率1/20規模の降雨による洪水を安全に流下させることを目標とする。
神宮寺川では、下流の資産集積区間については井伊谷川とのバランスの観点から年超過確率1/20規模の降雨による洪水を安全に流下させることを目標とし、平成23年9月洪水で浸水被害が発生した横尾地区については再度災害防止の観点から、年超過確率1/10規模の降雨による洪水を安全に流下させることを目標とする。
新川では、佐鳴湖において、湖岸堤の全整備を行い、佐鳴湖全体で一連の治水安全度を確保することを目標とする。
九領川では、年超過確率1/10規模の降雨による洪水を安全に流下させることを目標とする。
東神田川では、浸水区域が広域に広がることが想定される中橋下流区間については年超過確率1/50規模の降雨による洪水を安全に流下させることを目標とし、それより上流の区間については、年超過確率1/5規模の降雨による洪水を安全に流下させることを目標とする。
堀留川では、年超過確率1/10規模の降雨による洪水に対して、床上浸水の発生を防止することを目標とする。また、静岡県が実施する河川整備と併せて浜松市が実施する小中学校や公園、公民館などの公共施設への雨水貯留施設の整備あるいは住宅や商業施設、工場などの民間施設への雨水貯留施設の設置促進などといった流域対策や下水道事業等による内水対策が連携して行われることにより、堀留川で既往最大の被害をもたらした昭和50年10月洪水と同規模の洪水が発生した場合でも、床上浸水がほぼ解消されると考えられる。
津波対策に関しては、発生頻度が高く、発生すれば大きな被害をもたらす「計画津波」に対しては、人命や財産を守るため、海岸等における防御と一体となって、河川堤防等の施設高を確保することとし、そのために必要となる堤防等の嵩上げ、耐震・液状化対策を実施することにより津波災害を防御するものとする。
さらに、整備途上での施設能力以上の洪水や高潮、津波が発生した場合、その被害をできるだけ軽減するため、ソフト・ハード一体となった総合的な被害軽減対策を、関係機関や地域住民等と調整・連携し、地域の防災力の向上に努める。
河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、かんがい用水の安定取水、動植物の生息・生育等、今後とも適正な水利用が図られ、現状の流水の機能が維持されるよう、関係機関や地域住民と連携し、合理的な水利用の促進に努める。
河川環境の整備と保全に関する目標は、都田川水系内には多様な生物の生息・生育基盤となる環境・空間を有する拠点空間があることから、これらの区間の生息・生育環境の保全・再生に努める。また、拠点空間以外についても、河川と支川水路の連続性をできる限り有し、改修による影響をできる限り抑制することで、多様な生物の生息・生育環境の保全・再生に努めることを目標とする。
河川の水質に関しては、水利用や自然環境に大きな影響を与えず、また人の健康を保護し、かつ生活環境を保全する上で、望ましい水質が保たれることを目標とする。佐鳴湖については、これまでの流域一体となった水環境改善に向けた取組を継続し、健全な水循環の構築に努める。
河川の景観に関しては、長い年月を経て形成されてきた自然景観や文化や歴史を背景に形成された景観、地域で大切にされてきた景観などを尊重し、それらの景観に調和しかつ影響を与えることのない河川整備を目指す。
河川の利用に関しては、自然環境や人の生活環境に大きな影響を与えず、かつ公共の秩序を乱すことのない適切な河川利用がなされることを目標とする。