基本情報
水系名
青野川水系(あおのがわすいけい)
河川ごとの紹介
青野川(あおのがわ)
[延長]17,200m
[起点]静岡県賀茂郡南伊豆町蛇石111番の3地先の蛇石橋
[終点]海に至る
鯉名川(こいながわ)
[延長]1,900m
[起点]左支川合流点
[終点]青野川への合流点
二条川(にじょうがわ)
[延長]4,800m
[起点]静岡県賀茂郡南伊豆町一色無十前田1348番地先の一色橋
[終点]青野川への合流点
差田川(さしだがわ)
[延長]1,900m
[起点]静岡県賀茂郡南伊豆町二条字惣田592番の1地先の板落橋
[終点]二条川への合流点
一条川(いちじょうがわ)
[延長]3,000m
[起点]静岡県賀茂郡南伊豆町八声田709番地先の馬込橋
[終点]青野川への合流点
奥山川(おくやまがわ)
[延長]1,900m
[起点]静岡県賀茂郡南伊豆町青野字燈場前848番地先の藤田橋
[終点]青野川への合流点
前田川(まえだがわ)
[延長]430m
[起点]静岡県賀茂郡南伊豆町字前川962番の1地先(県道下流端)
[終点]青野川に至る
鈴野川(すずのがわ)
[延長]1,630m
[起点]静岡県賀茂郡南伊豆町青野字棚場1009-3地先の大師橋
[終点]奥山川への合流点
河川及び流域の概要
青野川は伊豆半島最南端の南伊豆町に位置する流域面積約72km2、流路延長約17.2kmの二級河川である。天城山系の長者ヶ原(標高380m)に源を発した流れは、途中、奥山川、一条川、二条川、及び鯉名川と合流しながら南伊豆町の中心地区である下賀茂温泉を貫し、弓ヶ浜海岸へ注いでいる。流域の人口は約8千人である。
青野川上流は谷や滝を形成し、中流では断片的に河岸段丘が分布している。沖積低地は川沿いと河口部に狭く分布している程度であり、河口部の沖積層は貝殻片を含む海成砂層からなっている。南伊豆町(総面積110.58km2)の面積の67%を青野川流域が占め、平地の少ない南伊豆町における農作物の生産と観光の場を提供している。
伊豆半島最南端の当地域は黒潮の影響を受け温暖な地域であり、年平均気温は16~17℃と静岡県下で最も温暖である。年間平均降水量は1,800mm程度であり、梅雨期にあたる5月から7月と、台風の影響を受ける9月に降水量が多く、集中豪雨もこの時期に度々発生している。
青野川上流域は緑豊かな森林が広がり、植生としてはスギ、ヒノキ、サワラの植林地が多く、クヌギ、コナラ、シイ、カシ等の天然林が混在している。天城山系に連なる当地方の山地には、シダ類の植生が多いことも特長のひとつである。河道は河床勾配が急なため渓流に近い流れが続き、河岸にはセンダン、スダジイなどの樹木が繁る。河床は大礫、玉石により構成されており、瀬を主な生活の場にする雑食性のオイカワ、アブラハヤ、ヨシノボリ、アマゴ等が生息している。セキレイ類、カワセミ類の水辺に生息する鳥類も多く見られる。
中流域は南伊豆町の中心地区を流れ、川沿いに細く連なる平地には田畑や民家が集中し、下賀茂温泉付近では湯けむりが立ち上る特徴的な景観を形成している。河床及び護岸部にはイタドリ、ハコベ、ヨモギ、ヨシ、ススキ等が植生し、堤防沿いにはサクラ、ヤナギ、アジサイが見られる。河道は河川改修により平瀬に近い状態の流れが続いているが、河床の一部の堆砂域にはウシハコベ、オギ、ススキ等の植生も見られるようになり、小規模な淵の形成も進みつつある。ここではアユ、オイカワ、アブラハヤ、ヨシノボリ等の瀬を主な生活の場とする魚類の他、チチブ、コイ、フナ、絶滅危惧種のニホンウナギ等の淵を生活の場とする魚類も生息している。
下流部の感潮区域は水面幅が広がり汽水域の魚を主体に多くの魚類が生息しており、ボラ、ハゼ類が多い。また、干潮時には干潟が出現し、シギ類、チドリ類等の水辺に生息する鳥類が多く見られる。南野川合流付近には河川改修前の旧河道部が唯一残り、蛇行河川で、あった昔の青野川の面影をしのぶことができる。特筆すべき植生として前田川合流点の左岸にマングローブ群落がある。移植されたものであるが、群落としては北限といわれ、学術的に貴重なものである。
青野川の河口部は深い入江で天然の良港であったことから、この地は古くから奈良、京都との関係が深く、朝廷に地場産品を送り出す水運の要衝として栄えた。このことは青野川が昭和の初期まで賀茂川と呼ばれていたことや、沿川に下賀茂、上賀茂、一条、二条、九条といった地名が残っていることからもうかがえる。
現在の南伊豆町の基幹産業は観光産業である。青野川沿いの下賀茂温泉は、緑深い山々に固まれた閑静な温泉街で、川沿いに温泉施設や宿泊施設が点在し、川沿いから湯けむりが立ちのぼる特徴的な景観を形成している。また、文豪幸田露伴がこよなく愛した地としても知られ、幸田露伴と下賀茂温泉の関わりを伝える文学記念碑も建てられている。
青野川河口から中流部にかけてと、支川二条川の一部は富士箱根伊豆国立公園に含まれている。河口の弓ヶ浜海岸は海水浴のメッカとして、下賀茂温泉と合せ南伊豆町の二大観光拠点となっている。
観光産業以外は、農業と漁業の第1次産業が主体となる。農業は野菜、花きを中心に行われており、漁業は貝類や伊勢エビを中心に行われている。
青野川では地域住民の手により沿川に柳や桜の植樹が行われるなど地域との関係が深く、身近な安らぎと憩いの場として、また、観光振興の軸として大きな役割が期待されている。
河川の整備の基本となるべき事項
1.基本高水並びにその河道及び洪水調節施設への配分に関する事項
基本高水のピーク流量は、既往の洪水や河川の規模、流域内の資産・人口などを踏まえ、県内の他河川とのバランスを考慮し、概ね50年に1回発生すると想定される降雨による洪水を対象として検討した結果、基準地点前原橋において650m3/sとし、これを河道に配分する。
河川名 | 基準地点 | 基本高水のピーク流量(m3/s) | 河道への配分流量(m3/s) |
青野川 | 前原橋 | 650 | 650 |
2.主要な地点における計画高水流量に関する事項
計画高水流量は基準地点前原橋において基本高水のピーク流量と同じ650m3/sとする。
計画高水流量配分図(出典:青野川水系河川整備基本方針)
3.主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項
主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る概ねの川幅は、以下のとおりとする。
河川名 | 地点名 | 河口からの距離(km) | 計画高水位T.P.(m) | 川幅(m) | 摘要 |
青野川 | 前原橋 | 4.95 | 8.66 | 50 | |
弓ヶ浜大橋 | 1.40 | 2.84 | 85 | ||
河口 | 0.0 | 7.9※1 | - |
(注)T.P.:東京湾中等潮位
※1:計画津波水位
4.主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項
岩殿地点下流における既得水利としては水道用水として0.075m3/sの許可水利があるほか、農業用水として約60haのかんがいに利用されている。これに対して、岩殿地点において概ね10年に一度発生すると想定される渇水流量は0.22m3/s(0.73m3/s/100km2)である。
岩殿地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量は、流水の占用状況、動植物の生息地または生育地の状況、流水の清潔の保持等を考慮して概ね以下のとおりとする。
河川名 | 地点名 | 期別 | 正常流量(m3/s) |
青野川 | 岩殿地点 | 1~5月、12月 | 0.24 |
6~9月 | 0.29 | ||
10~11月 | 0.28 |
(出典:青野川水系河川整備基本方針)