治水事業の沿革と現状
八木沢大川は、古くは寛文11年（1671年）の「亥の満水」として語り継がれている洪水や、大正８年（1919年）の「八木沢中島の洪水」により被害を受け、昭和に入ってからは、昭和13年（1938年）の「大洪水」、昭和36年（1961年）の「集中豪雨」による被害がある。特に、昭和36年の「集中豪雨」では、山林等の崩壊を招き、多量の土砂、岩石、流木を発生させ、堤防の決壊を誘発し、低平地に洪水が流れ込み、一帯を泥沼化させた。松原川流域と合わせ八木沢地区で家屋の流出１軒、半壊２軒、水田の埋没30ha等を招き、陸上交通網を寸断した。
また、過去の津波被害に関しては、安政元年（1854年）の安政東海地震で来襲した津波が、八木沢大川及び松原川を遡り、中島の妙蔵寺まで達し、八木沢地区で家屋が10軒流出し３人が死亡した記録が残っている。
八木沢大川は、昭和13年の「大洪水」を受け、上流部が昭和17年に砂防指定地に指定された。現在の河道は、昭和36年の「集中豪雨」を契機として、災害復旧工事で整備された河道で、中・下流部では引き堤や護岸整備が行われるとともに、上流部では既往の災害が土砂流出に起因していることから、土砂流出対策として流路工の整備が行われた。
また、河口部では、静岡県第３次地震被害想定（平成13年）に基づく津波対策として、水門の建設が完了している。
その後、平成９年の河川法改正に伴い、八木沢大川水系河川整備基本方針を平成14年５月に策定し、八木沢大川の基準地点富士見橋における基本高水のピーク流量を80m3/sとし、計画高水流量は、基本高水のピーク流量と同じ80m3/sとする計画とした。
東日本大震災を踏まえた静岡県第４次地震被害想定（平成25年）では、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「計画津波」※１と、発生頻度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす「最大クラスの津波」※２の二つのレベルの津波が設定されており、八木沢大川では「計画津波」は河川内を約0.6km以上遡上するとともに、「最大クラスの津波」では、河川及び海岸堤防を越水し、沿岸部で最大約10ha以上が浸水すると想定されている。
※１ 計画津波：静岡県第４次地震被害想定で対象としている「レベル１の津波」
※２ 最大クラスの津波：静岡県第４次地震被害想定で対象としている「レベル２の津波」
