基本情報
水系名
八木沢大川水系(やぎさわおおかわすいけい)
河川の紹介
八木沢大川(やぎさわおおかわ)
[延長]1,000m
[起点]静岡県田方郡土肥町八木沢字中島1142番地先の林道橋(静岡県伊豆市八木沢字中島1142番地先の林道橋)
[終点]海に至る
河川及び流域の概要
八木沢大川は、その源を西伊豆町と境をなす標高670mの山に発し、普通河川大山田川、門ノ川、助次郎川、論田川の支川を併せながら駿河湾に注ぐ二級河川である。流域は伊豆市の八木沢地区に位置し、流域面積約4.8km2、幹川流路延長約1.3kmである。
流域は、その一部が富士箱根伊豆国立公園内に位置し、大半が山地であり、下流部に一部低平地が存在する。流域の中・上流域の山間部は3方を山で囲まれた谷底地形を呈しており、流路は急峻である。下流部の低平地は、幕末以前は入り江であったが、川からの土砂供給と砂州の岬の発達により時間とともに港口を塞ぎ、慶応3年(1867年)の地域で「平助開地」と呼ばれる干拓事業により、入り江を埋め立て新田として開発された地域であり、現在は水田に利用されている他、宅地化が進んでいる地域である。
流域の大半を占める山地は火山性堆積岩類であり、下流部の平坦部は泥砂礫質地盤及び礫~砂礫質地盤(沖積低地)である。
流域は静岡県伊豆地方に属し、伊豆半島の西側に当たるため、駿河湾の影響を受け、8月と1月の平均気温の差は小さく、年平均気温16.5℃前後で極めて温暖な気候である。年平均降水量は1,800mm程度であり、降雨は冬に少なく夏に多い。また、低気圧、前線、台風等による強風・暴風が比較的多く、冬季には平均4m程度の西風が吹く日が多い。
八木沢大川流域の山腹は、一部シイ・カシ類の常緑広葉樹萌芽林やススキ群落が現存する以外は、杉・檜の人工林によって占められており、緑豊かな山相を呈している。
八木沢大川の上流部は、沿川が主に畑・水田に利用され、家屋が河川沿いや山裾に点在している。河道は、落差工の連続する階段状の流路工が整備されており、河床には、一部に土砂の堆積が見られ、ススキ、セイタカアワダチソウ等が群生している。
中流部は水田が広がっており、集落が位置し、里山としての風景を呈している。河床には寄州が形成され、ヨシやジュズダマが群生し緑豊かな河道であるが、地質に起因し水質が酸性を示すため魚類等の生息は困難である。
下流部は、集落が発達し、国民宿舎や旅館・民宿が立ち並んでいる。河道は、感潮区域であり、汽水域に生息するボラやハゼ類等が生息している。
八木沢地区は、かつては港としての良好な入り江を抱え、古くから人々は入り江を活用しこの地で生活をしていた。また、戦国時代には北條水軍の拠点にも利用された。そのため、縄文式遺物が発見された「長藤平遺跡」をはじめ、「谷戸・宮之窪遺跡」や「熊ヶ谷経塚」の遺跡や、源頼朝に由来する「鮫穴」、戦国時代に北條水軍の拠点であった「丸山城址」、永正元年(1503年)に日円上人によって日蓮宗に改宗された「妙蔵寺」等の多くの文化財が見られる。
八木沢大川流域が位置する八木沢地区の人口は約1,000人であり、主な産業は観光、農業、漁業である。この内、農業は稲作を中心に、畑わさびや花き栽培などが行われている。
八木沢大川は、通勤、通学、散策などに利用されるなど地域との関係が深く、住民に潤いを与える身近な安らぎの場として大きな役割が期待されている。
河川の整備の基本となるべき事項
1.基本高水並びにその河道及び洪水調節施設への配分に関する事項
基本高水のピーク流量は、既往洪水や河川の規模、流域内の資産・人口等を踏まえ、県内の他河川とのバランスを考慮し、概ね30年に一回発生すると想定される降雨による洪水を対象として検討した結果、基準地点富士見橋において80m3/sとし、これを河道へ配分する。
河川名 | 基準地点 | 基本高水のピーク流量(m3/s) | 河道への配分流量(m3/s) |
八木沢大川 | 富士見橋 | 80 | 80 |
2.主要な地点における計画高水流量に関する事項
計画高水流量は基準地点富士見橋において、基本高水のピーク流量と同じ80m3/sとする。
計画高水流量配分図
3.主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項
主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る概ねの川幅は以下のとおりとする。
河川名 | 地点名 | 河口からの距離(km) | 計画高水位T.P.(m) | 川幅(m) | 摘要 |
八木沢大川 | 河口 | 0.09 | 7.0※1 | 29 | |
富士見橋 | 0.46 | 4.35 | 17 |
(注)T.P.:東京湾中等潮位
※1:計画津波水位
4.主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項
八木沢大川の既得水利としては農業用水があり、約16haのかんがいに利用されている。
これに対し、渇水時においても概ね既得用水の安定的な取水が確保されており、水量は比較的豊かである。
流水の正常な機能を維持するための流量は、今後さらに、流況等の河川の状況の把握を行い、流水の占用、動植物の生息地または生育地の状況、流水の清潔な保持、景観等の観点から調査検討を行った上で設定するものとする。