自然環境
栃山川流域の自然環境については、山地部、平地部、河口部を含む低平地部の大きく3つに分けることができます。
山地部
東光寺谷谷川に関わる山地部は、河床勾配が90分の1程度と栃山川中下流部よりも急勾配です。その事から、瀬や淵などに加えて砂礫や大粒径の浮石が点在する河床や湧水など、山地流域の特徴的な河川環境をなしており、タカハヤ、カワヨシノボリなどが生息しています。植物では、水際にヨシ・クサヨシ群落が繁茂し、堤防にはマダケ群落や植林されたスギ、ヒノキが見られます。
平地部
栃山川、木屋川、黒石川などの上中流部に代表される平地部には、かつての農業用水路としての整備や河川改修により、単調な河道が形成されている区間が多くなっています。一方、栃山川など川幅のある河川では、改修後の時間経過とともに、流水の作用により瀬や小規模な淵が形成されている区間もあります。この区間には、カワムツ、アブラハヤ、オイカワ、フナ類のほか、河川と海を行き来するアユ、シマヨシノボリ、ウナギなど回遊性魚類が生息しています。また流域の水田やその周辺の小水路、河川内の流れの緩い場所にタモロコ、シマドジョウ、ドジョウが生息します。
鳥類では、水際を好むチュウサギ、ダイサギなどのサギ類やマガモ、カルガモなどのカモ類が見られるほか、オオヨシゴイ、カワセミ、猛禽類のミサゴ、渡り鳥のシギやチドリも確認されています。
植物は、水際にオギ群落やヨシ群落が形成され、堤防にはススキ群落が見られます。また、生育分布の東限として知られるナナミノキが栃山川旧河川敷内で確認できます。
低平地部
河床勾配が緩く流れの緩やかな栃山川、木屋川、黒石川などの河口部を含む低平地部は、干満の影響を受ける汽水域です。魚類ではボラ、コトヒキ、カワアナゴのほか、主に砂泥底を生息環境とするウロハゼ、マハゼ、ゴクラクハゼ、ノボリハゼ、ヒメハゼ、ヒナハゼ、ヌマチチブなどが見られます。黒石川、木屋川及び成案寺川などの中・下流部では、コイの生息密度が高いことにより、他の魚類の生息環境に悪影響を与えていることもうかがえます。
植物では水際にヨシ群落やセイタカヨシ群落が点在し、それらの周辺にはヨシゴイやオオヨシキリなどの鳥類が生息しています。近年ではサギ類がねぐらとしている松林や、カワウのコロニーも確認されており、鳥類の餌場となっています。
特定外来生物
流域には外来生物法により特定外来生物に指定された植物のオオキンケイギクやアレチウリが確認されています。また、隣接する瀬戸川や高草川などの近隣流域でも、植物のナルトサワギクやオオカワジシャが確認されています。栃山川の本来あるべき生態系に悪影響を及ぼす可能性が迫りつつあることから、今後の河川環境の整備と保全を図る上での新たな課題となっています。