治水事業の沿革と現状
中西川流域では、昭和33年狩野川台風において浸水被害の記録があり、その後、昭和57年台風18号による内水被害の記録がある。中西川では、これまで一定計画に基づく改修は行われていないが、災害復旧事業など、現在まで概ね全川にわたる護岸整備が行われており、近年は大きな水害の発生はない。
一方、現在の河道は、概ね年超過確率1/30規模の降雨による洪水を安全に流下させる断面は確保されていない。また、上流から中流部では、夏季に河川断面を覆うようにヨシが繁茂するほか、河口では漂砂により沿岸砂州が形成されることで河口閉塞が起こりやすく、台風時には高波浪が河川を遡上する現象が確認されていることから堤防高不足が懸念されるなど、治水上の課題も残されている。
津波被害に関しては、安政元年(1854年)に発生した安政東海地震により、沿岸部に高さ5m〜6m程度の津波が到達した記録が残っており、現在は河口部付近において、静岡県第3次地震被害想定(平成13年)に基づき、東海地震により発生が想定される津波への対策として、堤防の嵩上げ等の整備が進められている。
東日本大震災を踏まえた静岡県第4次地震被害想定(平成25年)では、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「施設計画上の津波」※1と、発生頻度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす「最大クラスの津波」※1の2つのレベルの津波が設定されており、中西川では「施設計画上の津波」は河川内を約0.4km以上遡上するとともに、「最大クラスの津波」では、河川及び海岸堤防を越水し、沿岸部で最大約70ha以上が浸水すると想定されている。
※1 施設計画上の津波:静岡県第4次地震被害想定で対象としている「レベル1の津波」
※2 最大クラスの津波:静岡県第4次地震被害想定で対象としている「レベル2の津波」