治水の現状と課題
五十鈴川は、昭和49年5月の伊豆半島沖地震及び昭和51年7月及び10月の集中豪雨での被災を契機に現在の河道が整備され、その後、大きな被害は生じていません。しかし、急峻な山地を流れ下る河川であり土砂の流出が多いことから、河床勾配が急激に緩くなる河口から300mまでの区間では、土砂の堆積が顕著であり、河道の維持を図ることが必要となっています。また、下流部においては、安政東海地震等の津波による大きな被害を受けた記録があり、予想される東海地震による津波でも浸水面積4.12ヘクタール、浸水家屋112戸に及ぶ大きな被害の発生が想定されています。これに対し、妻良漁港内では、海岸堤防と河口水門を一連とした整備が進められています。五十鈴川では、河口部において海岸堤防と一体となった津波対策水門が設置されており、津波発生時の確実な操作が必要です。
一方、近年では全国的に気候変動の影響とみられる集中豪雨が多発しており、今後、五十鈴川流域においても豪雨の多発が懸念されています。東子浦地区は、高齢者の占める割合が高く、また観光客が多く訪れる地域であり、水害の危険度の高い状況で、集中豪雨や津波等に対して災害時要援護者の安全をいかにして確保することが大きな課題となっています。
また、五十鈴川は、幹線流路延長600m程度の河川ですが、この区間において、感潮域や活発な土砂移動により瀬や淵が形成され、汽水域や渓流に棲む魚種の生息が確認されるなど、変化に富んだ河川環境を特色としています。このため、治水対策上、河道内の土砂の掘削を行う場合には、こうした良好な河川環境の保全が必要です。