五十鈴川水系

五十鈴川

河川整備の基本理念

五十鈴川水系の現状及び特性を踏まえ、今後の河川整備の基本理念を以下に挙げる。

安全で安心して暮らせる川づくり

東子浦地区では、洪水や津波により度々被害を受けてきたことと併せ、東日本大震災を踏まえた大規模地震による津波に対する安全の確保などの課題を有している。
さらに、高齢化が進み、災害時要援護者の割合の高い集落が下流部に形成され、観光客も訪れることから、災害により大きな被害の発生が予想される。
このため、今後は洪水を安全に流下させるために河積拡大を図るとともに、津波に対しては、施設整備はもとより、ハード・ソフト対策を総合的に組み合わせた多重防御による津波防災を推進する。さらに、地域住民の防災体制づくりを支援し、地域住民や観光客等の生命の安全確保を最優先した対策に努め、「安全で安心して暮らせる川づくり」を目指す。

川とのふれあいを創出する川づくり

五十鈴川は、地域住民の生活に密着した「かけがえのない川」である。
このため、今後は漁港や集落との景観や利用形態等の調和を図りながら、親しみやすい水辺空間を創出するとともに、近傍河川で確認されているアユカケ、ゴクラクハゼやボウズハゼ、セリやフキ等、五十鈴川で本来生息・生育・繁殖していたと想定される多様な動植物の生息・生育・繁殖空間の保全・再生を目指す。さらに、川を活用した地域コミュニティーの再構築を支援し、地域住民とともに「川とのふれあいを創出する川づくり」を推進する。

河川整備の基本方針

河川整備の基本理念を踏まえ、河川の総合的な保全と利用に関する基本方針を次のとおりとする。

ア 洪水、津波、高潮等による災害の発生の防止または軽減に関する事項

災害の発生の防止または軽減に関しては、河川の規模、既往の洪水、流域内の資産・人口等を踏まえ、県内の他河川とのバランスを考慮し、概ね30 年に1回発生すると想定される降雨による洪水を安全に流下させることのできる整備を目指す。その際、多様な動植物が生息・生育・繁殖できる良好な河川環境の保全・創出等に配慮する。
既存施設の効用を最大化するため、河道の弱点箇所である堆積土砂の対策を実施するとともに、土砂や流木が原因となる浸水被害の軽減が図られるよう、森林の適正な管理や土砂災害対策等を関係機関に働きかける等、流域一体となった河川整備に努める。
さらに、整備途上段階での施設能力以上の洪水や計画を上回る洪水が発生した場合においても、被害の最小化を図るため、日頃から水防活動との連携、ハザードマップ作成の支援等の情報提供、情報伝達体制の充実、土地利用計画との調整等の総合的な被害軽減対策を関係機関や地域住民と連携して推進する。
河川津波対策に関しては、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「計画津波」に対しては、人命や財産を守るため、海岸等における防御と一体となって、河川堤防等の施設高を確保することとし、そのために必要となる堤防等の嵩上げ、耐震・液状化対策を実施することにより津波災害を防御するものとする。
発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす「最大クラスの津波」に対しては、施設対応を超過する事象として、住民等の生命を守ることを最優先とし、地域特性を踏まえ、関係自治体との連携により、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせた津波防災地域づくり等と一体となって減災を目指すとともに、「計画津波」対策の実施に当たっては、必要に応じて堤防の天端、裏法面、裏小段及び裏法尻に被覆等の措置を講じるものとする。

イ 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項並びに河川環境の整備と保全に関する事項

河川水の利用に関しては、関係機関と連携して、流水の適正かつ合理的な利用が図られるよう努める。
河川環境の整備と保全に関しては、治水・利水面との調和を図り、漁村集落を流れる川であることを踏まえ、漁港や集落との調和を図りながら親しみやすい水辺空間を創出し、川が地域住民のふれあいの場となるように努めるとともに、周辺道路や海など様々な視点場からの眺望に考慮し、植生の緑と紺碧の海で構成される海岸線との景観の調和を図る。
また、流域の生態系に考慮し、海から川への連続性の確保、河床や植生の多様性を確保すること等により、在来種の生息・生育・繁殖環境の保全・再生に努める。
さらに、関係機関や地域住民と連携して家庭等からの汚濁負荷量の一層の削減を働きかけ、人々が安心して水にふれあえる水辺環境の保全・再生に努める。
また、外来種については、関係機関と連携して移入回避や必要に応じて駆除等にも努める。

ウ 河川の維持管理に関する事項

河川の維持管理に関しては、災害発生の防止、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全の観点から、河川の持つ多面的機能が十分に発揮できるように、適正な河川パトロールの実施等を図るとともに、住民や関係機関等と連携して適切に維持管理を行う。また、土砂が堆積しやすい河道形態であることから、堆積区間の河道状況の把握を行い、適切な堆積土砂対策に努める。
特に、堤防、水門等の治水上重要な河川管理施設の機能を確保するため、平常時及び洪水時における巡視、点検を適切に実施し、河川管理施設及び河道の状態を的確に把握する。維持修繕、機能改善等を計画的に行うことにより、常に良好な状態を保持するよう努める。

エ 地域との連携と地域発展に関する事項

五十鈴川流域の風土、歴史、文化を踏まえ、個性ある地域の発展のため、河川に関わる地域住民の自発的な活動や、川を活用した地域コミュニティーの再構築を支援し、南伊豆町のまちづくりと連携を図るとともに、地域住民や関係機関との協働による河川整備を推進する。また、河川に関する自然・歴史・文化や河川整備等の情報を積極的に提供するとともに、地域住民と の対話を進め、地域住民の川づくり活動との連携や支援を推進する。