基本情報
水系名
宇久須川水系(うぐすがわすいけい)
河川ごとの紹介
宇久須川(うぐすがわ)
[延長]3,340m
[起点]静岡県賀茂郡賀茂村宇久須字百合野1659番の3地先の砂防堰堤(静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須字百合野1659番の3地先の砂防堰堤)
[終点]海に至る
大久須川(おおぐすがわ)
[延長]1,950m
[起点]静岡県賀茂郡賀茂村宇久須字滝下2053番の2地先の砂防堰堤(静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須字滝下2053番の2地先の砂防堰堤)
[終点]宇久須川への合流点
赤川(あかがわ)
[延長]2,600m
[起点]静岡県賀茂郡賀茂村宇久須字大段3632番の1地先の柴山工場橋(静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須字大段3632番の1地先の柴山工場橋)
[終点]宇久須川への合流点
宇久須川水系付近の滝
面積105.52平方キロメートルの西伊豆町には大小170本、総長131,367mにのぼる河川があり、町の面積の89.0%を占める森林の中には大きな滝があり、宇久須川水系に5箇所、安良里浜川水系に1箇所、そして仁科川水系に8箇所確認されています。また、他にも名前のない滝が数多くあります。
宇久須川水系の5箇所の中では、夫婦滝が有名です。
河川及び流域の概要
宇久須川は、伊豆半島の西側に位置する風早峠、仁科峠に源を発し、赤川、大久須川の支川と合流した後、西伊豆町宇久須地区の田園部や市街地を経て駿河湾に注ぐ流域面積29.33km2、指定区間延長3.34km の二級河川である。上流域の西天城高原及び海岸線は富士箱根伊豆国立公園内に位置するとともに、河口部周辺は名勝伊豆西南海岸区域に指定されおり、豊かな自然が残されている。
流域の地形は、約90%を山地が占め、主に標高600m 以上の大起伏山地と標高200~600mの中起伏山地で構成され、中流から下流部には川沿いのわずかな範囲に平地が分布する。
流域の地質は、主に伊豆半島が海底火山であった時代の火山性堆積物から成る湯ヶ島層群で形成されており、上流域の一部に石英安山岩類、白浜層群が分布する。また、中下流部の河川沿川にわずかに礫層・砂礫層が分布している。かつて支川の赤川地域において採掘が行われていた珪石や、流域周辺の景勝地である黄金崎の地質は、湯ヶ島層群の主成分である安山岩が高温の地下水により変質作用を受けたものである。
河道特性としては、上流部の山付部においては河床勾配が1/10 と急流河川である。中流部から下流部は殆どが有堤区間となっており、河床勾配は中流部で1/60、下流部では1/100程度で、堤防天端と背後地の地盤高の比高差が大きな区間も存在する。
流域の気候は、遠州灘から駿河湾に沿って流れる黒潮の影響を受ける海洋性気候により、平均気温は16.2℃(気象庁松崎観測所昭和61 年~平成27 年)と全国平均の15.5℃に比べ温暖である。また、年平均降水量は1,966mm(気象庁松崎観測所昭和61 年~平成27 年)と、全国平均の1,718mm を上回る。
流域の土地利用は、山林が約91%と大部分を占め、水田・畑・原野等が約7%、市街地が 約2%であり、河川沿いを中心に宅地や田畑が分布している。
土地利用の変化については、昭和51 年から平成21 年にかけて、宇久須川や支川の大久須川沿川でわずかに宅地化が進行している。
支川の赤川上流域において行われていた珪石の採掘等により、その範囲が拡大しているが、現在では採掘は終了し、斜面などの緑化による現状復帰への取り組みが行われている。
一方で近年、流域内の山地部においてニホンジカ等の野生鳥獣被害が増加しており、下層植生の劣化に伴う保水力低下や土壌流出など河川への影響が懸念されている。
流域を含む西伊豆町の人口は、平成22 年時点で総数9,469 人であり、昭和35 年(1960年)頃をピークに減少傾向にある。また、65 歳以上の高齢者の割合は41%であり、静岡県内で最も高く、全国平均を大幅に上回っている。
産業は、昭和30 年代までは農業、漁業等の第一次産業が中心であったが、昭和40 年代以降は大幅に減少し、現在は第三次産業が中心である。平成22 年国勢調査によると、西伊豆町の産業別就労人口は第一次産業が約6%、第二次産業が約22%、第三次産業が約73%となっており、中でも「飲食業・宿泊業」の就業人口が最も多い。西伊豆町は川や海、山などの豊かな自然環境をいかした観光が産業の中心で、近海で水揚げされる魚介類、天草などの海産物、渓流部などで栽培されているわさびなど数多くの特産品のほか、町のキャッチフレーズとして掲げる「美しい夕陽」が見える景観や、温泉施設、海水浴場、キャンプ場などを目当てに年間約80 万人の観光客が訪れている。
特に、宇久須地区はガラスの主原料である珪石の産地として約70 年にわたりその採掘が行われたことから、ガラス文化の里として観光を展開している。
流域の交通については、伊豆半島の中央部と西伊豆地域を結ぶ国道136 号が宇久須川下流部で横断しており、地域の主要幹線道路であるとともに災害時における緊急輸送路としての役割も担っている。また、現在、伊豆地域では伊豆縦貫自動車道の整備が進められており、今後、更なる利便性の向上が期待される。
流域の河川に関わる歴史や文化について、宇久須川流域では伊豆の山々からわずかに開けた平野や港を中心に旧宇久須村の集落が形成された。流域では農業や漁業を中心として人々の生活が営まれ、周辺には五穀豊穣や豊漁を祈願した神楽などが伝統文化として引き継がれており、牛越神社の人形三番叟は静岡県の無形文化財に指定されている。
河口部に隣接する宇久須漁港は、明治15 年から沼津・松崎間に定期貨客船が運行され、その寄港地として栄えた。水系内の赤川流域では明治時代にガラスの原料である珪石の鉱床が発見され、昭和13 年より本格的に採掘が行われるようになり、一時期は国内ガラス原料の過半を供給したが、現在では採掘は行われていない。河口部に位置する宇久須港は、採掘された珪石の積出港として発展した。珪石の採掘は平成20 年に終了し、近年では付近から産出される砕石の移出が盛んになっている。
河川の整備の基本となるべき事項
1.基本高水並びにその河道への配分に関する事項
基本高水のピーク流量は、既往の洪水や河川の規模、流域内の資産・人口等を踏まえ、 県内の他河川とのバランスを考慮し、年超過確率 1/30 規模の降雨による洪水を対象として、基準地点宇久須において400m3/s とし、これを河道へ配分する。
河川名 | 基準地点 | 基本高水のピーク流量(m3/s) | 河道への配分流量(m3/s) |
宇久須川 | 宇久須 | 400 | 400 |
2.主要な地点における計画高水流量に関する事項
計画高水流量は、基準地点宇久須において基本高水のピーク流量と同じ400m3/s とする。
宇久須川計画高水流量配分図(出典:宇久須川水系河川整備基本方針)
3.主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項
主要な地点における計画高水位と計画横断形に係る概ねの川幅は、以下のとおりとする。
河川名 | 地点名 | 河口からの距離(km) | 計画高水位T.P.(m) | 川幅(m) |
宇久須川 | 河口 | 0.00 | T.P.+8.50※ | - |
宇久須 | 1.47 | T.P.+14.77 | 27.5 |
(注)T.P.:東京湾中等潮位
※:計画津波水位
4.主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項
流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関しては、今後さらに、河川流況等の把握に努め、流水の占用、動植物の生息地または生育地の状況、流水の清潔の保持、景観等の観点からの調査検討を踏まえて設定するものとする。
(出典:宇久須川水系河川整備基本方針)