大川水系

大川

TOP川の紹介 > 基本情報

基本情報

水系名

大川水系(おおかわすいけい)

河川ごとの紹介

大川(おおかわ)
[延長]3,200m
[起点]北山川合流点
[終点]海に至る

河川及び流域の概要

大川は、沼津市戸田地区の達磨山や金冠山等を含む稜線の西側に源を発し、北山川や下椎木川といった普通河川と合流した後、谷底平野を形成しながら戸田の市街地を貫流して駿河湾に注ぐ、流域面積約18.0km2、幹川流路延長約3.3km の二級河川である。
流域の地形は、大部分が急峻な山地であり、下流域のわずかな範囲に沖積低地が形成されている。
流域の地質は、達磨山溶岩流(達磨火山噴出物)や井田溶岩流(井田火山噴出物)など火山噴出物が大半の流域に分布しており、下流のわずかな低地に砂礫層や泥砂礫互層といった未固結堆積物が分布している。
大川が流れ込む戸田漁港周辺は、海流などで運ばれた土砂が湾の入り口部分に帯状にたまってできた砂嘴である御浜岬の地形や達磨火山の溶岩流と侵食地形など、特徴的な地形や地質をみることができる。
大川の河床勾配は、上流部はl/20 程度、中流部はl/50 程度、下流部は谷底平野を流れているが勾配は1/100 程度であり、流域の多くの面積を占める上流の山地から、谷底平野北側の山地の裾を沿うように、比較的急勾配で駿河湾に流れ込んでいる。河道は、上流から中流部が掘込河道であり、中流域から下流域の谷底平野に広がる大川左岸側の市街地に対して築堤河道となっている。
流域の気候は、遠州灘から駿河湾に沿って流れる黒潮の影響を受ける海洋性気候であり、平均気温は16.2℃(気象庁松崎観測所昭和61 年~平成27 年)と全国平均の15.5℃に比べ温暖である。また、年平均降水量は1,780mm(気象庁土肥観測所昭和61 年~平成27 年)であり、全国平均の1,683mm を上回る。
流域の土地利用は、山林が約92%(平成21 年度)と大部分を占め、水田・畑・原野で約5%、宅地が約1%となっている。谷底平野が形成される中流域から下流域にかけて戸田地区の中心市街地が広がっている。また、土地利用については、近年、大きな変化は見られない。
大川流域を含む戸田地区の人口は、昭和53 年の約5,900 人をピークに年々減少し、平成28 年では約3,000 人である。世帯数についても平成23 年の約1,500 世帯をピークに年々減少し、平成28 年では約1,400 世帯である。また、老年人口(65 歳以上)割合は増加傾向にあり、平成28 年時点の高齢化率は38%である。
戸田地区は、風光明媚な自然景観のほか、御浜岬を中心とした海水浴などの海のレジャー、タカアシガニをはじめとする食の魅力、江戸時代末期に日本を訪れた軍艦ディアナ号を背景とした歴史・文化施設や温泉などが多数立地した観光地となっている。主要な産業は観光業や製造業、農林水産業であり、平成22 年度国勢調査によると、産業別の就労人口が第一次産業は18%、第二次産業24%、第三次産業は58%となっている。
第一次産業は、戸田漁港を中心に行われる漁業が中心となっており、特産品として、「タカアシガニ」や「メヒカリ」等の深海魚が名物となっている。また、農林業に関しては、みかんの栽培をはじめ、近年ではみかんの原種である「タチバナ」を使ったリキュール類など、オリジナル製品化への取組も積極的に行われている。農産品ではしきみやしいたけが有名であり、特に「戸田しきみ」は高品質で知られている。
第二次産業は、天然の良港であった戸田漁港を中心として造船などの製造業が、第三次産業は、海水浴客など観光客の宿泊などの「宿泊業・飲食サービス業」がそれぞれ最も盛んに行われている。
なお、戸田地区の観光交流客数は、平成17 年から徐々に減少し、沼津港と戸田漁港を結ぶ高速定期船も利用者の減少により平成26 年8月に廃止され、同年に約18 万人まで減少したが、平成27 年に日帰り温泉施設を備えた地域活性化センターとしての役割を持つ「道の駅くるら戸田」がオープンし、観光客や地域の方々の利用が進んだこともあり、観光客の利用と地域の利用をあわせて約37 万人と増加している。
陸の交通は、沼津市口野から伊豆市土肥地区を結ぶ県道沼津土肥線が大川の河口付近を横断している。また、東西方向の主要な道路としては、伊豆市修善寺地区から戸田地区に向かう県道修善寺戸田線が中流部で大川沿いを通過している。今後、伊豆縦貫自動車道の延伸とともに伊豆半島内外からのアクセス向上が期待される。
大川流域を含む戸田地区の河川に関わる歴史や文化としては、井田大川流域の「井田遺跡」や「松江古墳群」、沢海川流域の「沢海古墳群」などの遺跡や古墳等において弥生時代の土器が発見されており、遺跡から弥生時代(紀元前300年頃~紀元後300年頃)から人々が生活を営んでいたことが推定される。平安時代から井田荘として、江戸時代は幕府直轄地、沼津藩や旗本領として栄え、特に漁業を中心として海とかかわってきた。また、戸田漁港は、安政年間、来日中のロシア使節プチャーチン提督が安政東海地震の津波被害により座乗鑑ディアナ号を失い、代艦である日本初の洋式帆船のヘダ号を建造した地として知られている。現在も、戸田とロシアの交流は続いており、戸田漁港まつりではプチャーチンロードパレードやディアナ号慰霊祭が行われている。
この地区には、プチャーチン提督と和親条約の改訂交渉を行った大行寺や、明治時代初期に建てられた洋風意匠を実現した擬洋風住宅である松城家住宅などの文化財、静岡県指定無形民俗文化財に指定されている「戸田の漁師踊・漁師唄」という大漁を願う伝統的な神楽などが多く残されている。

 

河川の整備の基本となるべき事項

1.基本高水並びにその河道への配分に関する事項

基本高水のピーク流量は、既往の洪水や河川の規模、流域内の資産・人口等を踏まえ、県内の他河川とのバランスや既往の治水施設の整備規模を考慮し、年超過確率1/30 規模の降雨による洪水を対象として、基準地点さくら橋において270m3/s とし、これを河道へ配分する。

基本高水のピーク流量等一覧表
河川名 基準地点 基本高水のピーク流量(m3/s) 河道への配分流量(m3/s)
大川 さくら橋 270 270

2.主要な地点における計画高水流量に関する事項

計画高水流量は、基準地点さくら橋において基本高水のピーク流量と同じ270m3/s とする。

 計画高水流量配分図

大川計画高水流量配分図(出典:大川水系河川整備基本方針)

3.主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項

主要な地点における計画高水位と計画横断形に係る概ねの川幅は、以下のとおりとする。

主要な地点における計画高水位、川幅
河川名 地点名 河口からの距離(km) 計画高水位T.P.(m) 川幅(m)
大川 河口 0.0 T.P.+ 5.300※ -
さくら橋 1.49 T.P.+22.667 28.8

(注)T.P.:東京湾中等潮位
※:計画津波水位

4.主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項

流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関しては、今後さらに、流況等の河川における状況の把握を行い、流水の占用、動植物の生息・生育・繁殖地の状況、景観等の観点からの調査検討を踏まえて設定するものとする。

 大川水系図
(出典:大川水系河川整備基本方針)

大川水系図.pdf/234KB/