糸川水系

糸川

河川整備の基本理念と基本方針

糸川では大きな水害の記録は無いが、流域の開発や沿川の市街化が進んでおり、気候変動に伴う降雨の激化による河川の氾濫や土砂災害、相模トラフ地震に伴う津波への備えが求められている。
一方、糸川は、熱海3河川の中でも熱海温泉の中心部に最も近く、早咲きのあたみ桜等の花が人々を迎える糸川遊歩道や水辺に触れ合える川床散策路など、周辺の景観や街づくりと調和した川づくりが実施されている。
これらを踏まえ、糸川水系の河川整備計画における基本理念を次のとおり定める。

基本理念

熱海温泉の中心部を貫流する糸川においては、華やぎのある遊歩道をシンボルとするもてなしの街づくりとの調和を図りながら、災害の発生の防止と軽減を図ることにより、賑わいと潤いのある舞台となり安らぎのある川づくりを目指す。

計画対象区間

本河川整備計画の対象区間は、下記に示す糸川の県管理区間とする。

糸川の管理区間
水系名
 
河川名
 
区間
 起点 終点
糸川 糸川 左岸:熱海市熱海字笹良ヶ台1751番の2地先
右岸:熱海市熱海字笹良ヶ台1752番の9地先
海に至る

出典:静岡県河川指定調書

計画対象期間

本河川整備計画の対象期間は、河川整備計画の策定年度を初年度として概ね20年間とする。
なお、本計画は、現時点における流域の社会経済状況、自然環境、河道状況等を前提として策定したものであり、策定後の状況変化や新たな知見・技術等の進展により適宜見直しを行っていく。

洪水等による災害の発生防止又は軽減に関する目標

河川工事にあたっては、災害の発生防止または軽減に関しては、流域内の人口や資産などの重要度、過去の水害の発生状況やその後の河川整備の状況、及び現状の整備状況を踏まえ、年超過確率1/5規模の降雨による洪水(時間雨量50mm程度)を河川内で流下させるよう河道を維持することを目標とする。
計画規模を上回る洪水や整備途上段階での施設能力を超える洪水・高潮等の発生に対しては、平常時より水防活動の実施体制確保や重要水防箇所の周知、リアルタイムの雨量等の情報提供などのソフト対策を推進するとともに、市街化の進展や主要交通などの都市資産が集積する土地利用状況などを踏まえ、できる限り被害が軽減されるよう総合的な減災対策について、地域住民、県、市の関係部局と連携を強化し、地域防災力の向上に努める。
河川津波対策に関しては、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「計画津波」に対して、人命や財産を守るため、海岸等における防御と一体となって、津波災害を防御するものとする。
発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす「最大クラスの津波」に対しては、施設対応を超過する事象として、住民等の生命を守ることを最優先とし、地域特性を踏まえ、熱海市との連携により、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせた津波防災地域づくり等と一体となって減災を目指す。

 計画高水流量配分図
計画高水流量配分図(出典:糸川水系河川整備計画)

河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する目標

河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、今後、河川流況の把握に努め、既存の水利用、動植物の生息・生育・繁殖環境、景観などに配慮しつつ、流域住民や関係機関と連携を図りながら、適正な水利用が行われ、現況の流水の機能が維持されるように努める。また、河川に関わる森林などの多面的機能の保全についても関係機関と連携した取り組みを促進して、健全な水循環系の構築を目指す。

河川環境の整備と保全に関する目標

河川環境の整備と保全に関しては、治水・利水との調和を図り、ニホンウナギ、回遊性ハゼ類など、糸川の環境を代表する動植物の生育・生息・繁殖環境の保全・再生に努める。
このため、河口や沿岸環境を含めた川と海との連続性を維持するとともに、河川改修などを実施する際には、「多自然川づくり」による工法を積極的に取り入れるなど、治水に影響の無い範囲で水辺環境の保全を図る。
また、観光地熱海を代表する河川であることから、津波対策水門の整備等にあたっては、周辺道路、川沿いの歩道、熱海港渚地区親水護岸など、様々な視点場からの眺望に配慮して、周辺景観との調和を図る。
さらに、急激な増水等に対する河川利用者の安全性に配慮しつつ、人が川とふれあうことのできる水辺空間の創出に努める。

河川と地域との関わりに関する目標

糸川は、地域の潤いや安らぎの場として期待されるとともに、自然との触れ合いの場、美しい景観を備えた地域のシンボルとしての役割も求められている。また、「糸川桜まつり」などの地域と連携した川と関わりのあるイベントが開催されており、熱海市における貴重な観光資源の一つとなっていることから、今後も引き続き熱海市の地域計画等との調整・連携を図りつつ、地域住民や関係機関との協働による川づくりを推進する。
また、インターネットなどを利用した広報を通じて、河川に関する情報を幅広くかつ積極的に提供して地域住民の河川に対する意識向上を図るとともに、地域防災力の向上を目指し、地域住民の活発な川づくり活動との連携や支援を推進する。