基本情報
水系名
井田大川水系(いたおおかわすいけい)
河川ごとの紹介
井田大川(いたおおかわ)
[延長]1,000m
[起点]静岡県田方郡戸田村井田字宮ノ後920番地先の砂防堰堤(静岡県沼津市井田字宮ノ後920番地先の砂防堰堤)
[終点]海に至る
河川及び流域の概要
井田大川は沼津市戸田地区に位置する真城山北西部の斜面に源を発して西に流下し、途中、普通河川と合流した後、井田地区の中心部を貫流し駿河湾に注ぐ、流域面積3.56km2、河川延長0.78km の二級河川である。河口部には、沼津市が管理する井田漁港が位置している。井田大川流域は、伊豆半島北部の駿河湾に面した達磨火山地内にあり、下流域は海岸線に沿って開けた低地部となり、周囲は火山山地となっている。
基盤を構成する地質は、第四紀更新世の井田火山噴出物の輝石安山岩類および凝灰角礎岩で、標高の高い山地では達磨火山噴出物が覆っている。
井田大川は井田火山の西半分が大きく侵食を受けてできた大きな谷間の出口に河口をもち、河口の南側に広がる平坦地は海流により運ばれた土砂で伸びた砂嘴の先端が湾を閉じて形成された土地である。この地区には、井田火山の噴出物の断面の露頭や海跡湖である明神池が位置するなど、地域の特徴的な地質や地形を見ることができる。
井田大川の河床勾配は、上・中流部が1/10 程度、河口・下流部が1/40 程度と全川にわたって急峻な河川であり、流域の多くを占める上流の山地から北側の山地の裾を沿うように一気に海まで流下している。
流域の気候は、遠州灘から駿河湾に沿って流れる黒潮の影響を受ける海洋性気候であり、平均気温は16.2℃(気象庁松崎観測所昭和61 年~平成27 年)と全国平均の15.5℃に比べ温暖である。また、年平均降水量は1,780mm(気象庁土肥観測所昭和61 年~平成27 年)であり、全国平均の1,683mm を上回る。
流域の土地利用は、山林が約96%(平成21 年度)と大部分を占めており、狭い谷底平野の河川沿いに宅地が位置し、田畑は海岸線付近の低平地に分布している。また、土地利用については、近年、大きな変化は見られない。
井田大川流域を含む戸田地区の人口は昭和53 年の約5,900 人をピークに年々減少し、平成28 年では約3,000 人である。世帯数についても平成23 年の約1,500 世帯をピークに年々減少し、平成28 年では約1,400 世帯である。また、老年人口(65 歳以上)割合は増加傾向にあり、平成28 年時点の高齢化率は38%である。なお、井田大川流域が位置する井田地区の世帯数と人口は、平成28 年時点で38 世帯、70 人となっている。
戸田地区は、風光明媚な自然景観のほか、御浜岬を中心とした海水浴などの海のレジャー、タカアシガニをはじめとする食の魅力、江戸時代末期に日本を訪れた軍艦ディアナ号を背景とした歴史・文化施設や温泉などが多数立地した観光地となっている。沼津市戸田地区の主要な産業は観光業や製造業、農林水産業であり、平成22 年度国勢調査によると、産業別の就労人口が第一次産業は18%、第二次産業24%、第三次産業は58%となっている。
第一次産業は、戸田漁港を中心に行われる漁業が中心となっており、特産品として、「タカアシガニ」や「メヒカリ」等の深海魚が名物となっている。また、農林業に関しては、みかんの栽培をはじめ、近年ではみかんの原種である「タチバナ」を使ったリキュール類など、オリジナル製品化への取組も積極的に行われている。農産物として、しきみやしいたけがあり、特に「戸田しきみ」は高品質で知られている。
第二次産業は、天然の良港であった戸田漁港を中心として造船などの製造業が、第三次産業は、海水浴客など観光客の宿泊などの「宿泊業・飲食サービス業」がそれぞれ最も盛んに行われている。なお、戸田地区の観光交流客数は、平成17 年から徐々に減少し、沼津港と戸田漁港を結ぶ高速定期船も利用者の減少により平成26 年8月に廃止され、同年に約18 万人まで減少したが、平成27 年に日帰り温泉施設を備えた地域活性化センターとしての役割を持つ「道の駅くるら戸田」が近隣の大川流域にオープンし、観光客や地域の方々の利用が進んだこともあり、観光客の利用と地域の方々の利用をあわせて約37 万人と増加している。また、井田大川の河口部周辺には透明度が高く水質の良い海水浴場があり、海水浴や年間を通じてスキューバーダイビングを楽しむことができることから、ダイビングショップや10 カ所の宿泊施設がある。
陸の交通は、沼津市口野から伊豆市土肥地区を結ぶ県道沼津土肥線が、井田大川が山地から流れでる付近を横断している。今後、伊豆縦貫自動車道の延伸とともに伊豆半島内外からのアクセス向上が期待される。
井田大川流域を含む戸田地区の河川に関わる歴史や文化としては、井田大川近傍の「松江古墳群」や「井田遺跡」などの遺跡や古墳等において弥生時代の土器などが発見されており、遺跡から弥生時代(紀元前300 年頃~紀元後300 年頃)から人々が生活を営んでいたことが推定される。平安時代から井田荘として、江戸時代は幕府直轄地、沼津藩や旗本領として栄え、特に漁業を中心として海とかかわってきた。
河川の整備の基本となるべき事項
1.基本高水並びにその河道への配分に関する事項
基本高水のピーク流量は、既往の洪水や河川の規模、流域内の資産・人口等を踏まえ、県内の他河川とのバランスや既往の治水施設の整備規模を考慮し、年超過確率1/30 規模の降雨による洪水を対象として、基準地点さくら橋において55m3/s とし、これを河道へ配分する。
河川名 | 基準地点 | 基本高水のピーク流量(m3/s) | 河道への配分流量(m3/s) |
井田大川 | 井田橋 | 55 | 55 |
2.主要な地点における計画高水流量に関する事項
計画高水流量は、基準地点井田橋において基本高水のピーク流量と同じ55m3/s とする。
井田大川計画高水流量配分図(出典:井田大川水系河川整備基本方針)
3.主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項
主要な地点における計画高水位と計画横断形に係る概ねの川幅は、以下のとおりとする。
河川名 | 地点名 | 河口からの距離(km) | 計画高水位T.P.(m) | 川幅(m) |
井田大川 | 河口 | 0.0 | T.P.+ 5.900※ | - |
井田橋 | 0.43 | T.P.+18.549 | 10.5 |
(注)T.P.:東京湾中等潮位
※:計画津波水位
4.主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項
流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関しては、今後さらに、流況等の河川における状況の把握を行い、流水の占用、動植物の生息・生育・繁殖地の状況、景観等の観点からの調査検討を踏まえて設定するものとする。
(出典:井田大川水系河川整備基本方針)