基本情報
水系名
稲生沢川水系(いのうざわがわすいけい)
河川ごとの紹介
稲生沢川(いのうざわがわ)
[延長]15,100m
[起点]下田市加増野488番の5地先の富田橋
[終点]海に至る
平滑川(ひらなめがわ)
[延長]760m
[起点]下田市6丁目388番の5地先の県道岩下橋
[終点]稲生沢川への合流点
敷根川(しきねがわ)
[延長]790m
[起点]下田市本郷字嶋作700番地先の敷根橋
[終点]稲生沢川への合流点
蓮台寺川(れんだいじがわ)
[延長]1,350m
[起点]下大沢合流点
[終点]稲生沢川への合流点
稲梓川(いなずさがわ)
[延長]5,000m
[起点]下田市須原1077番の1地先の北の沢橋
[終点]稲生沢川への合流点
須郷川(すごうがわ)
[延長]2,000m
[起点]狩足沢合流点
[終点]稲梓川へに合流点
河川洪水から生活を守る
管内は過去に幾度もの河川氾濫に見舞われています。中でも昭和51年の梅雨前線による豪雨では、南伊豆町の青野川や、下田市の稲生沢川で大洪水が発生し、多くの人的被害や家屋被害が発生しました。こうした洪水を防ぐため、河川の改修工事を行っています。
河川及び流域の概要
稲生沢川は、那賀川流域との分水嶺である下田市加増野の婆娑羅山(標高608m)に源を発し、支川と合流しながら下田市をほぼ真東に貫き、稲梓川と合流した後に進路をほぼ真南に変え、蓮台寺川等を合流して下田港へ注ぐ流域面積74.4km2、流路延長15.1kmの二級河川である。流域は、大部分が伊豆半島南部の中心である下田市に属し、稲梓川の上流域が河津町にまたがっている。
流域の地形は、大部分が起伏に富んだ山地であり、伊豆半島が海底火山であった時代の火山性堆積物から成る白浜層群や湯ヶ島層群等で構成される。また、稲梓川合流点付近より上流部には砂礫で構成される河岸段丘が形成され、下流部には砂礫や砂泥で覆われる谷底平野が形成されている。
河道特性としては、上流部は河床勾配が1/100以上の急流で掘込河道となっており、中流部は河床勾配が1/100~1/250程度、下流部は河床勾配が1/350~1/600程度で、それぞれ堤防を有する区間が断続的に見られるほか、河口から3km地点付近までは感潮区間となっている。
流域の気候は、年平均気温が16.8℃(石廊崎特別地域気象観測所平成15年~平成24年)で、黒潮の影響により温暖な気候である。年平均降水量は平均1,785mm(石廊崎特別地域気象観測所平成15年~平成24年)であり、全国平均の1,610mm(昭和56年~平成22年)を上回る。
流域の土地利用は、山林が約9割(平成21年度)で大部分を占めるほか、上流部の河岸段丘や中流部の谷底平野は主に畑地や水田に利用され、下流部の谷底平野には市街地が広がっている。また、河口部周辺は古くから港として利用されている。土地利用の変化については、伊豆急行が開通した昭和36年以降に流域の開発が進み、下流部では市街地が拡大した。
流域の人口は、昭和53年の約2.2万人をピークに減少し、平成26年では約1.5万人となっている。世帯数は、平成9年の約7,500世帯をピークに緩やかな減少に転じ、平成26年には約7,200世帯となっている。また、65歳以上の高齢者の割合は3割を超え、全国平均を上回っている。
産業は、平成22年度の下田市統計による産業別就労人口が、第一次産業5%、第二次産業13%、第三次産業82%となっている。下田市は、豊かな自然環境や温泉、開国の地としての歴史などの観光資源に恵まれ、年間で300万人が訪れるなど、観光が主要な産業となっている。また、伊豆の山々から豊かな水が供給される海域では、水産業も盛んであり、中でもキンメダイは水揚げ日本一を誇る。
主要な交通網としては、伊東を経由して首都圏にも直結する伊豆急行が稲生沢川の下流部を並走している。また、伊豆の東西及び中央を縦貫する国道135号、136号、414号が下田駅付近で結節しており、稲生沢川沿いを国道414号、及び松崎に至る主要地方道が通っている。
河川に関わる歴史や文化としては、河口部を含む下田港をめぐる歴史が特筆される。下田港は古来より東西海上交通の要衝であり、江戸時代には風待ち港や物資の補給基地として利用され、海の関所である船改番所も設置され「出船入船三千艘」と称されるほど繁栄していた。幕末の1854年に日米和親条約締結により箱館とともに下田が開港され、ペリー艦隊が入港・上陸したほか、同年にはロシアのプチャーチンが入港し日露和親条約が締結された。周辺には、ハリスによって日本初の米国領事館となった玉泉寺など多くの史跡が残され、支川の平滑川沿いは伊豆石やなまこ壁の家並みと歴史が調和したペリーロードが特徴的な景観を形成している。下田港は、高度成長期には造船業が盛んで伊豆諸島との定期航路もあり賑わいの中心であったが、現在は避難港として位置付けられている。
河川の整備の基本となるべき事項
1.基本高水並びにその河道への配分に関する事項
基本高水のピーク流量は、既往の洪水や河川の規模、流域内の資産・人口等を踏まえ、県内の他河川とのバランスを考慮し、年超過確率1/50規模の降雨による洪水を対象として、基準地点本郷橋において970m3/sとし、これを河道へ配分する。
河川名 | 基準地点 | 基本高水のピーク流量(m3/s) | 河道への配分流量(m3/s) |
稲生沢川 | 本郷橋 | 970 | 970 |
2.主要な地点における計画高水流量に関する事項
計画高水流量は、基準地点本郷橋において基本高水のピーク流量と同じ970m3/sとする。
稲生沢川計画高水流量配分図(出典:稲生沢川水系河川整備基本方針)
3.主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項
主要な地点における計画高水位と計画横断形に係る概ねの川幅は、以下のとおりとする。
河川名 | 地点名 | 河口からの距離(km) | 計画高水位T.P.(m) | 川幅(m) |
稲生沢川 | 河口 | 0.0 | T.P.+3.90※ | - |
本郷橋 | 3.4 | T.P.+5.66 | 51.0 |
(注)T.P.:東京湾中等潮位
※計画津波水位
4.主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項
流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関しては、今後さらに、河川流況等の把握に努め、流水の占用、動植物の生息地または生育地の状況、流水の清潔の保持、景観等の観点からの調査検討を踏まえて設定するものとする。
(出典:稲生沢川水系河川整備基本方針)