基本情報
水系名
鮎沢川水系(あゆさわがわすいけい)
河川ごとの紹介
鮎沢川(あゆさわがわ)
[延長]15,750m
[起点]五郎作川合流点
[終点]神奈川県境に至る
野沢川(のざわがわ)
[延長]2,700m
[起点]柳沢川合流点
[終点]鮎沢川への合流点
小山湯舟川(おやまゆぶねがわ)
[延長]1,300m
【左岸】
[起点]静岡県駿東郡小山町湯船字湯船沢572番の2地先
[終点]野沢川への合流点
【右岸】
[起点]静岡県駿東郡小山町湯船字湯船沢629番の1地先
[終点]野沢川への合流点
須川(すがわ)
[延長]5,500m
[起点]静岡県駿東郡小山町大御神字川久保地先の湧水地点
[終点]鮎沢川への合流点
中島川(なかじまがわ)
[延長]1,700m
[起点]静岡県駿東郡小山町中島溜池
[終点]野沢川への合流点
上野川(うえのがわ)
[延長]1,600m
【左岸】
[起点]静岡県駿東郡小山町上野169番地先
[終点]須川への合流点
【右岸】
[起点]静岡県駿東郡小山町中日向485番の2地先小山町道上野大御神線暗渠下流端
[終点]須川への合流点
奥の沢川(おくのさわがわ)
[延長]1,600m
[起点]静岡県駿東郡小山町上野字北山1493番の29地先上の山橋下流端
[終点]上野川への合流点
立沢川(たつざわがわ)
[延長]4,500m
[起点]静岡県駿東郡小山町北部幹線農道立沢川17号暗渠下流端
[終点]馬伏川への合流点
馬伏川(まぶせがわ)
[延長]6,450m
[起点]御殿場市西田字川バタ543番の1地先の市道奥駕野橋下流端
[終点]鮎沢川への合流点
小山佐野川(おやまさのがわ)
[延長]4,500m
[起点]静岡県駿東郡小山町用沢字相野1445番の3地先の相野橋下流端
[終点]馬伏川への合流点
竜良川(たつらがわ)
[延長]4,500m
[起点]御殿場市上小林字向中山414番の1地先の市道上小林橋上流端
[終点]馬伏川への合流点
つつじ川(つつじがわ)
[延長]4,500m
[起点]御殿場市上小林字角畑132番の3地先の市道橋上流端
[終点]竜良川への合流点
抜川(ぬけがわ)
[延長]6,350m
[起点]御殿場市柴怒田537番地先の市道シシケ橋上流端
[終点]馬伏川への合流点
小山川(おやまがわ)
[延長]4,300m
[起点]御殿場市中畑字下原429番の6地先の市道下原橋上流端
[終点]鮎沢川への合流点
河川及び流域の概要
酒匂川・鮎沢川は、静岡県御殿場市の富士山東麓に源を発し、神奈川県小田原市を貫流して相模湾へ注ぐ流域面積約582k ㎡、幹川流路延長約42km の二級河川である。
起点から県境に至るまでの上流域(静岡県域)では鮎沢川と呼ばれ、県境を越えて中・下流域(神奈川県域)では酒匂川と呼ばれている。酒匂川・鮎沢川には、馬伏川、須川、野沢川、河内川、川音川、狩川等の30 の支川があり、流域の自治体は、静岡県御殿場市、小山町、神奈川県小田原市、南足柄市、秦野市、開成町、大井町、松田町、山北町の4市5町にまたがっている。
流域の地形は、富士山、箱根火山の外輪山、丹沢山地、足柄山地、大磯丘陵等、全体の約8割を占める山地・丘陵地と、約2割を占める足柄平野からなり、地質は地形に対応して、火山岩や火山砕屑物が多く、富士山麓の扇状地堆積物、足柄山地の足柄層群、足柄平野の氾濫原堆積物等で構成されている。特に、火山砕屑物に覆われた上流部は、大雨等で崩壊しやすい地質であるため、これまでに幾度も土砂混じりの濁流となって河川に流出し、災害をもたらしてきた。
気候は、温暖多雨の太平洋側気候に属している。小田原観測所の年平均気温は15.3℃で全国平均の15.5℃と同程度であるが、年平均降水量は約2,000mm で全国平均の約1,500mm より多い。また、上流域では降水量が更に多く、御殿場観測所の年平均降水量は約2,800mm となっている。河道特性としては、上流部の平均河床勾配が約1/60、河口付近でも約1/230 であり、全国の主要な河川と比較しても非常に急勾配となっている。
流域の土地利用は、上流域は山岳・森林地帯で、中・下流域は農地が展開する他、小田原市を中心とした市街地が広がっている。全体の約7割を山林、原野、田畑が占め、宅地は2割程度となっており、田畑が減少する一方で宅地が増加する傾向が続いているものの、近年ではその変化が緩やかとなっている。建設中の新東名高速道路の開通に伴い、インターチェンジ周辺等において新たな土地利用も予想される。
また、日本の東西を結ぶ大動脈となる地域に位置しており、重要な交通幹線であるJR 東海道新幹線、JR 東海道本線が酒匂川下流域を横断し、東名高速道路等、多数の重要な幹線道路が集中している。静岡県の関係市町の人口は、昭和30 年代より微増している一方、神奈川県の関係市町の人口は、昭和40~60 年代に急増し、近年では横ばいに推移しており、現在では、神奈川県域は約47 万人、静岡県域は約11 万人で、全体の人口は約58 万人となっている。
水利用としては、古くから農業用水として活用されており、酒匂堰等を通じて下流部や流域を越えて水田に供給されている。慣行水利権は、鮎沢川水系に150 件、酒匂川水系に182 件が存在しており、そのほとんどがかんがい用水に利用されている。なお、支川の河内川上流には神奈川県管理の三保ダムがあり、洪水調節とともに水道用水の確保と発電が行われている。許可水利権は鮎沢川水系に5件、酒匂川水系に22件が設定されており、その多くが発電用の取水である。そのため、上流部の鮎沢川では、発電用の取水により、流量が少ない区間が一部発生している。また、下流部には飯泉取水堰があり、取水された水道用水は、横浜市、川崎市、横須賀市、相模原市等、流域外に広く供給されている。
なお、漁業権は、酒匂川及びその支川では三保ダムの区域を除く全域と、鮎沢川、馬伏川、竜良川で設定されている。
流域における災害としては、富士山の宝永大噴火(1707 年)により火山灰が60cm以上堆積する等の甚大な被害が発生し、その翌年には、岩流瀬土手、大口土手の堤防が決壊、下流右岸の村むらが土砂で埋まった。その後、幕府による土手の修復が行われ、完成した岩流瀬土手を文命西堤、大口土手を文命東堤と名づけた。また、昭和47年7月の山北災害を引き起こした梅雨前線により、流域全体で浸水家屋628 戸という甚大な被害が発生し、昭和57 年8月の台風10 号では、流域全体で浸水家屋128 戸の被害が発生している。また、近年では平成22 年9月の台風9号において、神奈川県山北町の水の木観測所で最大時間雨量147mm の降雨があり、流域全体で全半壊34 戸、浸水家屋376 戸の被害が発生した。この時、上流の野沢川や須川等の沿川では山腹崩壊や土石流が発生し、スコリア(火山噴出物の一種)を主とする多量の土砂が河川に流出、河道が閉塞する被害も発生した。酒匂川下流部においては、濁度が長期間高くなり、取水停止や内水面漁業等に影響が生じている。また、三保ダム上流の世附川沿川等でも土石流が発生して多量の土砂が丹沢湖に流入した。近年でも、局地的な集中豪雨が度々発生し、大きな出水が繰り返されている。
このように、酒匂川では古くから洪水と氾濫を繰り返しており、家屋、農地、人命を守るため、江戸時代には三角土手(川音川合流点左岸)や多数の霞堤を築いてきた。
酒匂川の近代改修と沿川の市街化の進展等に伴い、霞堤は連続堤に改築され、遊水区域が埋め立てられたが、川音川合流点の下流右岸に残る中曽根堤、坂口堤、九十間堤の3箇所は、現在も治水機能を果たしている。また、酒匂川沿いの松並木については、小田原藩に願い出て8,000 本を植えたという記録があり、並んで植えられた松が、溢水した水の勢いを弱める役割を果たしていた。さらに、古くには「坪石制度」と呼ばれるものがあり、堤防上を一家で1坪ずつ受け持ち、1年に1回、石を積み、洪水の時には捨石にも活用していた。
河川の整備の基本となるべき事項
1.基本高水並びにその河道への配分に関する事項
基本高水のピーク流量は、既往の洪水や河川の規模、流域内の資産・人口等を踏まえ、年超過確率1/100 規模の降雨による洪水を対象として、飯泉基準地点において4,200m3/s とする。このうち流域内の洪水調節施設により800m3/s を調節し、河道への配分流量を3,400m3/s とする。
河川名 | 基準地点 | 基本高水のピーク流量(m3/s) | 洪水調節施設による調節流量(m3/s) | 河道への配分流量(m3/s) |
酒匂川 | 飯泉 | 4,200 | 800 | 3,400 |
2.主要な地点における計画高水流量に関する事項
計画高水流量は、県境地点において1,000m3/s、松田地点において2,800m3/s とし、さらに川音川などの合流量及び残流域からの流入量を合わせて飯泉地点において3,400m3/s とする。
鮎沢川計画高水流量配分図(出典:鮎沢川水系河川整備基本方針)
3.主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項
本水系の主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る概ねの川幅は、次表のとおりとする。
河川名 | 地点名 | 河口からの距離(km) | 計画高水位T.P.(m) | 川幅(m) | 摘要 |
酒匂川 | 飯泉 | 2.4 | 11.32 | 340 | 基準地点 |
酒匂川 | 松田 | 10.4 | 49.79 | 290 | 主要な地点 |
鮎沢川 | 県境 | 26.6 | 222.69 | 50 | 主要な地点 |
(注)T.P.:東京湾中等潮位
4.主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項
ア. 酒匂川
酒匂川における既得水利は、農業用水として約20.4m3/s、水道用水として約21.1m3/s、工業用水として約0.2m3/s、発電用水として最大80.2m3/s、合計約121.9m3/s である。
これに対して飯泉地点における平均渇水流量は約14.2m3/s、10 年に1 回程度の規模の渇水流量は12.3m3/s である。
飯泉地点における流水の正常な機能を維持するために必要な流量は、かんがい期に約21m3/s、非かんがい期に約20m3/s とし、以て流水の適正な管理、円滑な水利使用、河川環境の保全などに資すものとする。
なお、流水の正常な機能を維持するために必要な流量には、水利流量が含まれているため、水利使用などの変更に伴い、当該流量は増減するものである。
イ. 鮎沢川
鮎沢川における既得水利は、発電用水として最大16.5m3/s と農業用水(慣行水利)である。
流水の正常な機能を維持するために必要な流量に関しては、利水者との連携を強化して水利用の実態把握に努め、動植物の生息・生育・繁殖地の状況、流水の清潔の保持、景観等を考慮して設定するものとする。
(出典:鮎沢川水系河川整備基本方針)