治水事業の沿革と現状
安良里浜川は流域の約9割を山地が占め、過去に発生した豪雨において洪水による浸水被害のほか土砂流出による災害が多く発生している。主な被害は昭和36 年の豪雨によるもので、橋梁の流出や護岸の決壊が発生するなどの被害を受けた。この豪雨災害を契機に、災害復旧事業等による河川整備が行われ、昭和38 年に静岡県の管理河川に指定された。また、流域内の山地部には砂防指定地のほか、水源涵養や土砂流出防備の目的をもつ保安林が多く指定され、各管理者により砂防堰堤や治山施設の整備など土砂流出対策の取組が行われており、流域一体で治水安全度の向上が図られている。
しかしながら、平成25 年7 月18 日には流域内を中心に局地的な豪雨が発生し、上流域からの大規模な土砂流出により安良里浜川の河道が閉塞したことにより、流域で床上49 戸、床下179 戸の浸水被害が発生した。このため、土砂流出対策として災害関連緊急砂防事業による砂防堰堤の整備が進められているものの、安良里浜川の流下能力は、住宅が近接する0.1kmから0.4kmの区間において年超過確率1/5 を下回る箇所もあり、十分な治水安全度が確保されていない。
近年、気候変動に伴う豪雨の激化により施設の能力を超える洪水の発生が懸念されており、河川の氾濫や土砂災害が発生した場合には、人口や資産が集中する下流部の市街地において大きな被害の発生が懸念される。
安良里浜川周辺における過去の津波被害に関しては、江戸時代に発生した地震によるものが伝えられている。安政東海地震(1854 年)により、海面上5.0m~6.0m の津波に襲われ、海岸から約600m 内陸の多爾夜神社(海抜約11.5m)の波切不動尊手前まで津波が遡上したとの記録が残されている。
流域の沿岸部では、これまで静岡県第3次地震被害想定に基づき漁港施設と一体となった津波対策が行われており、海岸防潮堤の整備や安良里浜川河口部における津波対策水門(TP+3.57m)の整備が完了している。また、西伊豆町では、水門や陸閘等の海岸保全施設を効率的かつ迅速に管理制御する「津波防災ステーション」の整備が進められている。
東日本大震災を踏まえた静岡県第4次地震被害想定(平成25 年)では、発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす「レベル1の津波」と、発生頻度が極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす「レベル2の津波」の二つのレベルの津波が設定されており、安良里浜川では、「レベル1の津波」は河川内を約0.2km 以上遡上するとともに、「レベル2の津波」では、河川護岸及び海岸堤防を越流し、沿岸部で最大約22ha 以上が浸水すると想定されている。