下流部の自然環境
下流部は扇状地を形成し、広い低水敷の中を流路は網状に流れています。
洪水時には河床や流路が大きく変動するため、河道内の樹木は少なく、比高の大きい場所ではコゴメヤナギ群落なども見られますがその面積は小さいです。渇水時には流水が伏没する区間も見られ、河床や流路が不安定なことから、生物相は豊かではないですが、特有の自然環境が形成されています。
河口から1.25㎞付近の右岸には湧水を水源とするクリークがみられ、ここでは地元ボランティアによる環境づくりがなされ、地域の人々には、緑が多く水の流れに淀みのない魅力的な場所、自然体験学習ができる場所となっています。
河口から5.5㎞に藁科川が合流し、合流点付近には河道中央に浮かぶように見える舟山があります。舟山ではアラカシなどの常緑広葉樹の自然林と林床にシダ類が生育し、砂礫河川で流路が安定せず裸地が多い安倍川においては特異な植物相を形成しています。
河口部は発達した砂州により広い汽水の静水域が形成され、水際の浅瀬はサギ類のエサ場として重要な機能を果たしているほかに、カモメ類・カモ類・カワウ・チドリ類などの集団越冬地としても利用されています。また、回遊性の魚類であるシロウオや、カマキリ(アユカケ)などが確認され、産卵場所となっている可能性が高いです。
川原の広い裸地は、コアジサシ・シロチドリ・イカルチドリなど砂礫地に営巣する鳥類の生息場所となっています。
河口部の植物では、河川の水際に生育するカワヂシャのほか、抽水植物のミクリ、干潟に生育する塩性植物でレッドデータブック絶滅危惧Ⅱ類のシバナ、流れの緩やかな水域に生育する沈水植物のホザキノフサモなどが確認されており、生育立地の多様さを物語っています。